非常食でお馴染みの缶詰やレトルト食品の生産量を確認しよう(2024年版)
1923年9月1日に発生した関東大震災を受け、9月は防災月間と定められている。災害に備えて用意されることが多い非常食の中でも、すぐに思い浮かぶのが缶詰やレトルト食品。これらの食品の生産量は増えているのだろうか、それとも減っているのだろうか。業界団体の資料を基に確認する。
次に示すのは日本缶詰びん詰レトルト食品協会が公開している、日本国内における缶詰やレトルト食品の生産量をグラフにしたもの。缶詰は飲料缶(自動販売機などで販売している、缶入りの飲料)は除外してある。飲料缶を非常食として用意するのは考えにくいためである。
意外にもレトルト食品と缶詰(飲料除く)の生産量は逆の動きをしている。データが取得できる2004年以降に限れば、レトルト食品の生産量は漸増、缶詰(飲料除く)は漸減している。両者の生産量の立ち位置が入れ替わったのは2008年。
非常食として注目され需要が伸びたであろう、東日本大震災が発生した2011年以降を見ると、レトルト食品は2011年に伸び、さらに2012年には伸び方を急なものとしている。缶詰(飲料除く)の方は2011年は前年比で減少したものの、翌年の2012年にはイレギュラー的な伸び方を示している。しかしそれ以降は東日本大震災以前と同じように、おおよそ前年比でマイナスの動きに戻ってしまっている。
2021年以降にレトルト食品が前年比での落ち込みを見せているのは、2020年における新型コロナウイルスの流行による需要拡大からの反動によるものと思われる。そして2022年以降は、ロシアによるウクライナへの侵略戦争で生じている資源高騰・物価高が大きく影響しているのだろう。缶詰(飲料除く)が2023年で、前年比での落ち込み方が急になっているのを見るに、資源高騰による影響は相当大きなものと思われる。
生産量の動きを前年比で示したのが次のグラフ。
缶詰(飲料除く)はほとんど前年比でマイナス。プラスとなったのは東日本大震災翌年の2012年と、2014年、2018年(グラフの上では0.0%だが、厳密にはプラス0.0053%)のみ。他方レトルト食品は2006年と2015年、2021年以降以外はプラス、つまり前年比で生産量が増加している。東日本大震災直後の2012年はプラス6.3%と大幅な伸びを見せており、防災意識が高まったことでレトルト食品を買い求める人が増え、それに合わせて生産量も増やしたものと考えられる。
缶詰(飲料除く)の生産量の減少は同じように賞味期限が長いレトルト食品にシェアを奪われているというのがあるのだろう。また原材料の一つである水産物の水揚げが減少するとともに、需要そのものが減っているのも一因と考えられる。他方レトルト食品は非常食としてだけではなく、普段使いの食品としてもごく普通に買われるようになっている。中食需要の拡大も大きな後押しだろう。非常食としても、今後はますます缶詰(飲料除く)は減り、レトルト食品が増えていくに違いない。もっとも、昨今の資源高騰が落ち着くのが前提ではあるのだが。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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