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フワちゃんは暴言騒動の謝罪でなぜ「やす子本人に直接謝る」としたのか、貫こうとした「キャラクター性」

田辺ユウキ芸能ライター
(写真:長田洋平/アフロ)

タレントのフワちゃんが、お笑い芸人のやす子のXのポストに対して不適切な投稿をおこない、物議となっている騒動。8月5日には、ニッポン放送がラジオ番組『フワちゃんのオールナイトニッポン0』について、「パーソナリティによる不適切な投稿が確認できたため」として同日深夜に予定されていた放送を中止すると発表。また、フワちゃんが出演しているスマートフォン、Google PixelのCM動画も8月6日昼までに非公開に。今後も、フワちゃんが出演する番組などは対応に追われることが想定される。

フワちゃん自身は8月4日23時41分、Xに1度目の謝罪文を投稿。さらに8月5日19時6分、『フワちゃんのオールナイトニッポン0』の放送休止を受けて2度目の謝罪文をXに載せた。ただそれらの文章をよく読むと、1度目と2度目の謝罪文には心境の変化が感じられた。

1度目の謝罪文は独自の言い回しなどがあり、2度目はかなり丁寧な文面に

1度目の謝罪文は「本当にすみません 今ここで皆さんに報告することではないのですが、言っちゃいけないこと言って、傷つけてしまいました ご本人に直接謝ります」という形だった。おそらくこの謝罪文は、フワちゃんが自分の判断で投稿したと思われる。「言っちゃいけないこと言って、傷つけてしまいました」という言い回しや、句読点の付け方などに独自性が感じられるためだ。

しかし2度目の謝罪文はスタイルがガラッと変わっている。「昨日の私の不適切な投稿により、本日のラジオは休止となりました。」という書き出しのあと、行を空けて「私自身の投稿で、ご本人はもちろん、投稿を見た方々を深く傷付けてしまったことを心から後悔しています。本当に申し訳ありませんでした。」とかなり丁寧な文面になっていた。句読点もきっちり付けられ、口語であればついつい「い抜き言葉」を使ってしまいそうなところも「心から後悔しています」となっている。こちらはきっと、事務所関係者らの目を通した上での内容だったのではないだろうか(もしくは事務所関係者から下書きが送られて、フワちゃんが自分のなかに落とし込んでから投稿したか)。

1度目と2度目の謝罪文の内容や言い回しの変化からも、「ただごとではすまない」という危機感のあらわれがにじんでいる。

1度目の謝罪文で「ご本人に直接謝ります」と謝罪範囲を狭めた意味

1度目の謝罪文については、フワちゃん自身の今回の騒動の捉え方、そして自分のキャラクター性をキープしようとする様子も受け取れた。

特に興味深かったのが「今ここで皆さんに報告することではないのですが」「ご本人に直接謝ります」と綴っていた部分。第一はきっと「すぐに謝る気持ちをあらわそう」としたのだろう。ただ、謝る相手の範囲を「やす子本人」に狭めた言い方にしたのは、「大ごとにしたくない」という心理が働いたのではないか。これは同件に限らず、私たちの生活にもよくある話。「個人間で解決する」と公言しておけば、部外者の“侵入”を防いで、耳の痛い話を聞かなくてすむ(周りからなにか言われたら「こっちで解決したんで」でクリアできる)。無意識的にそういった言い回しになりがちだ。

また、やす子本人ならまだしも、ネット上の顔も知らない“その他大勢”に謝るのは「違うのではないか」と考えるところもあったはず。たしかに芸能人のスキャンダルの謝罪会見なんかで、頭を下げる芸能人の姿を見て「誰に対して謝っているんだろう」「本人同士で解決すれば良いんじゃないか」と思うところもある。フワちゃんが「ご本人に直接謝ります」と謝罪範囲を狭めた気持ちも、分からなくもない。

ちなみにフワちゃんは、これまでの発言に目を通すと、ファン以外の“その他大勢”や好き勝手を言う“ネット民”をシャットアウトしたいタイプだと読み取れる。逆にそれだけ、外の声を意識しすぎてしまうのだ。

2024年5月29日放送の『フワちゃんのオールナイトニッポン0』では、フワちゃんはマルタ共和国から中継で出演。そして「ヨーロッパでは、Yahoo!ニュースは見れません」「ざまぁみろ。ヤフコメ民の無駄な努力、乙。長文書いても届きません」「ヤフコメ開放区へようこそ。ヨーロッパからの高みの見物。お前らの声は一生届かない」と、ネットニュースのコメントを封じることができる状況を喜んでいた。

1度目の謝罪文で騒動を矮小化させる言い回しになったのも、フワちゃんのそういったキャラクター性や性質が関係しているように思えてならない(そういうキャラクター性や性質が悪いというわけではない)。

あと、やす子に対する不適切投稿から謝罪までの間には、Instagramのストーリーで芸人仲間と海水浴を楽しむ様子を掲載していたが、こういった行動も、自分の世界以外の声は届かないこと、批判を食らってもダメージがないことなど、どんな状況でも「フワちゃんはフワちゃんである」というキャラクター性のアピールがうかがえた。

自由奔放、明るい、不躾…フワちゃんの芸風的なプライドが見え隠れ?

ただ、関係者は「それではいけない」と考えたのだろう。だからこそ2度目の謝罪文では「ご本人はもちろん、投稿を見た方々を深く傷付けてしまった」と批判にちゃんと耳を傾けていることを記したのだ。

「本アカウントと裏アカウントを間違えて誤爆したのでは」という憶測も起きていたが、「TBS NEWS DIG」(※1)の取材に対し「本件の投稿がXの裏アカウントから投稿しようとしたものであったかのような報道等がございますが、投稿時点では、既に凍結されていたアカウントを除き、Xの別のアカウントはございません。」と答えたのも、つまりそういうことである。

フワちゃんはネットの憶測に耳をふさぎたい性質だ。しかし事務所関係者としては「今回ばかりはそうであってはならない」となったのだろう。

また1度目の謝罪文からは、自由奔放、明るい、不躾、そしてダメージを受けづらいというフワちゃんのキャラクター性をキープさせようという意識も見られる。こういった場合は、建前であったとしても礼儀正しい謝罪がふさわしい。ただ「言っちゃいけないこと言って」とフワちゃんらしい言い回しになっていたのは、やはりキャラクター性がチラつくからだろう。ある種、フワちゃんの芸風的なプライドと言えるかもしれない。

誰だって人に謝るような場面は多々ある、これからも強みを生かして活躍を

2020年12月24日配信「Yahoo!ニュース」(※2)のオリジナル記事では、フワちゃんは「割と『愛想』って信じてる派。言ってることがちゃんちゃらおかしくても、愛想さえよければ逃げ切れるときもあるんだよね。あたしって生意気だったり失礼な態度を取ったりすることもあるから、こいつだったら許せるなと思われる工夫は人一倍怠っちゃいけないと思う」と語っていた。

実際「遅刻の常習犯」と言われながら、2023年10月24日放送『踊る!さんま御殿!!』(日本テレビ系)では、アンミカから「謝り上手」と言われていた。身近な人たちからすれば、フワちゃんはそういう憎めなさがあるのだろう。だからこそ、ここまで爆発的な人気を集めたと言える。

今回はそのやり方を間違えたところがある。ただ、ポジティブさや憎めなさはフワちゃんの大きな武器であり、強みだ。誤りはどんな人にでもある。そして、人生のなかで頭を下げる場面は誰にだって多々訪れる。そんななか、フワちゃんは反省などを経て、よりおもしろいタレントになるかもしれない。フワちゃんの真価は、この騒動の後に見ることができるのではないか。

※1:【フワちゃん】所属事務所 「投稿時点では、既に凍結されていたアカウントを除き、Xの別のアカウントはございません」 【不適切投稿】騒動にコメント(TBS NEWS DIG)

※2:呼び捨て・タメ口は尊敬してるから――「素人」フワちゃんの流儀(Yahoo!ニュース)

芸能ライター

大阪を拠点に芸能ライターとして活動。お笑い、テレビ、映像、音楽、アイドル、書籍などについて独自視点で取材&考察の記事を書いています。主な執筆メディアは、Yahoo!ニュース、Lmaga.jp、Real Sound、Surfvote、SPICE、ぴあ関西版、サイゾー、gooランキング、文春オンライン、週刊新潮、週刊女性PRIME、ほか。ご依頼は yuuking_3@yahoo.co.jp

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