成人男性の18.1%・女性9.1%は糖尿病の「強い疑い」(2024年8月発表版)
厚生労働省が2024年8月に発表した定期調査「国民健康・栄養調査」(※)の最新版となる2022年分における概要報告書によると、2022年時点では推計で糖尿病が強く疑われる20歳以上の人は男性で18.1%、女性で9.1%存在していることが分かった。
糖尿病とは体内の各組織を動かすエネルギー源となるブドウ糖が、細胞内に上手く運ばれず、血液内に留まってしまう症状。ホルモンの一種であるインスリンが不足したり、うまく細胞に作用しないことで起きる。
また糖尿病には大きく4つ「1型」「2型」「遺伝子異常や他の病気が引き金となるもの」「妊娠糖尿病」に分けられるが、多くは「1型」「2型」に該当する。「1型」は子供のうちに始まることが多く、かつては小児糖尿病などと呼ばれていた。「2型」は食事や運動などの食生活によって肝臓や筋肉へのインスリンの働きが悪くなったり、インスリンの出る量が少なくなって起きる。日本では95%以上がこの「2型」タイプであり、糖尿病が一般的には「生活習慣病」の代表的な病症の一つとされるのも、これが起因となっている。
糖尿病に関して今調査では、調査対象母集団のうち血液検査を行った人(20歳以上)を対象とし、その検査から取得した各種パラメータや調査票の関連項目を基に、「糖尿病が強く疑われる者(強度の糖尿病リスク者)」(糖尿病治療を現在行っている人も含む)を集計している。その結果が次のグラフ。例えば男性70歳以上は「強く疑われる」が27.0%とあるので、男性70歳以上の人のうち、1/4強は糖尿病の可能性が多分にある、あるいは治療中となる。
男女別では男性の方が値が高い。また年齢階層別では年上になるに連れて値が増えていく。70歳以上では男性で27.0%、女性で15.8%が「強い疑い」状態にある。
これを男女総計の値の上で、毎年の変移を2006年以降の推移にして確認したのが次のグラフ。なお「国民健康・栄養調査」では経年変化の調査結果に関して、年齢階層による差異が生じやすい項目の全体平均については、2014年分から構成比によるひずみを補正した年齢調整後の値を併記するようになった。最初のグラフの通り「糖尿病が強く疑われる人」も年齢階層で大きな差が出ることから、経年でひずみが生じ得るため、年齢調整後の値も併記されている。そのため、グラフも別途作成した。社会全体の実情を知るには調整前、その動向の原因を考察するのには調整後のグラフを併せて見るのが望ましい。
調整前のグラフの限りでは男女ともに少しずつ、しかしながら間違いなく上昇しているように見える。しかし調整後のグラフでは女性はほぼ横ばい・ボックス圏内での動き、男性は上下に大きくぶれがあるものの、全体的には穏やかな上昇に見えなくもない。そして直近年2022年の減少ぶりは、調整後の方が大きな度合いであることから、高齢層の増加が全体の傾向としての減少の勢いにブレーキをかけている実情が見て取れる。世間一般における「糖尿病リスクの増加」は、多分に元々リスクの高い高齢者の人口構成比が増加しているのが一因であることがうかがえる。
糖尿病は放置しておくと多種多様な合併症を引き起こす。特に「糖尿病神経障害」「糖尿病網膜症」「糖尿病腎症」から成る3大合併病は高い発症率とリスクで知られている。確率的には自分自身はもちろんだが、身近な人の発症を見聞きすることが多分にありえる病気である以上、一通りの知識と予防策を学んでおくことをお勧めしたい。
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※国民健康・栄養調査
健康増進法に基づき、国民の身体の状況、栄養素など摂取量および生活習慣の状況を明らかにし、国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることを目的とするもの。調査時期は2022年11~12月中。今回調査分では調査実施世帯数は2910世帯で、調査方法は調査票方式。
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