Yahoo!ニュース

ニュースを信頼できるか、ジャーナリズムを支える土台と考えているのか。世間一般の考えは

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
ニュースは、報道は信頼に足るものなのか(写真:アフロ)

インターネットの普及で情報の双方向性が当たり前のものとなり、品質や方向性など多様な観点で、報道の有り様について問われる機会が増えてきた。今回は博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が2024年6月に発表した「メディア定点調査2024」(※)の公開値から、報道業界の姿勢に対する人々の思いについて、その実情を推し量れそうな設問の結果を見ていくことにする。

次に示すのは報道への考え方に関する2つの設問「プロの記者が書いたニュースは信頼できる」「新聞やテレビの報道は、ジャーナリズムを支える土台だと思う」について、同意できる人の動向を属性別に記したもの。例えば「プロの記者が書いたニュースは信頼できる」の全体は14.8%なので、全体の14.8%は「プロの記者が書いたニュースは信頼できる」と思っていることになる。

↑ 報道への考え方(属性別)(2024年)
↑ 報道への考え方(属性別)(2024年)

今設問における「プロ」とは、例えば大手新聞社に所属している記者のような、報道業界におけるプロの記者を意味し、特定分野の第一人者が書き手として記事を書いているといった状況は想定されていない。その点で、プロの記者が書いたニュースだから信頼できると言及できる人が14.8%しかいないのは、現状を如実に表す結果に違いない。無論、報道業界自身にとっては衝撃的な値には違いだろうが。

「新聞やテレビの報道は、ジャーナリズムを支える土台だと思う」は32.6%。「プロの記者が書いたニュースは信頼できる」の14.8%と比べれば高い値だが、それでも3割強でしかない。報道業界の姿勢、報道のプロによる挙動や発言が問題視されるたびに、自身の矜持として「我々の報道はジャーナリズムを支える土台であるから、必要不可欠なものに違いない」との主張を見聞きするが、一般の人の目からは肯定的には見られていないことになる。

属性別に見ると、「プロの記者が書いたニュースは信頼できる」は男女間の差異はさほどなく、年齢階層別では15~19歳と50代でやや高めの値が出ており、特に15~19歳では唯一の2割超え。未成年者は経験がまだ浅く、他の情報との比較が十分にできるほどの能力を持ち合わせていない人が多いのかもしれない。

「新聞やテレビの報道は、ジャーナリズムを支える土台だと思う」では、男女間の差異はほとんどなく、年齢階層別では15~19歳と中年層以上で高め。特に60代では44.3%と唯一4割を超えている。一般的に高齢層は新聞やテレビのような従来型のメディアへの信頼が厚い傾向があるが、それが今設問への肯定意見の多さを導いているのかもしれない。とはいえ、最大値を示した60代ですら5割に届いていない。

この動向を経年推移で見たのが次のグラフ。「新聞やテレビの報道は、ジャーナリズムを支える土台だと思う」は2017年からのものとなっている。

↑ 報道への考え方
↑ 報道への考え方

実のところ記録のある限りでは、「プロの記者が書いたニュースは信頼できる」も「新聞やテレビの報道は、ジャーナリズムを支える土台だと思う」も、大きな変化はない。つまり昔も今も、報道に対する人々のとらえ方に大きな違いは生じていないことになる。もっとも直近の2024年では双方とも前年比で大きな減少を示しており、特に「新聞やテレビの報道は、ジャーナリズムを支える土台だと思う」は経年推移における平均的な値を下回り、底が抜けたような形を示してしまっているのが気になるところではある。

■関連記事:

【動画視聴、他人との交流、情報検索…パソコンとスマホで大きく異なるインターネットの使い方(最新)】

【国内の政治や経済問題の情報源として、各メディアはどこまで信頼されているのだろうか(最新)】

※メディア定点調査2024

調査方法は郵送調査方式。調査期間は2024年1月26日から2月9日。東京都を対象にRDD(Random Digit Dialing)方式で選ばれた15歳から69歳の男女個人に対し調査票が送付され、643通が回収された。各値は2023年の住民基本台帳を基に年齢階層・男女でのウェイトバックが実施されている。

過去の調査では利用機器に2014年からタブレット型端末が追加されている。2013年までは(ノート)パソコンと同一視され回答にくわえられていた可能性もあるが、2014年以降は機器として独立項目が設けられたため、以前と比べてメディア接触時間の合計が上乗せされている可能性が高い(メディア接触時間が有意で増加している)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項のない限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項のない限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事