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腸内細菌を整えるグルテンフリーの効果 - 消化器症状や皮膚疾患へ好影響!?

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:イメージマート)

グルテンフリーダイエットが腸内細菌や皮膚の健康に与える影響について、とても興味深い研究結果が発表されました。

【グルテンを避けると、お腹の中の細菌はどう変わる?】

グルテンは、小麦やライ麦などに含まれるタンパク質の一種です。グルテンを食べると体調が悪くなる人は、グルテンを避ける食事療法(グルテンフリーダイエット)を行いますが、これがお腹の中の細菌に与える影響を調べた研究結果が最近報告されました。

研究では、お腹の不調や片頭痛、アトピー性皮膚炎がある人を対象に、6週間のグルテンフリーダイエットを行いました。その結果、グルテンを避けたグループでは、お腹の中のカビの種類が増えましたが、細菌の種類や数はあまり変わりませんでした。一方、グルテンを食べていたグループでは、カビの種類に大きな変化は見られませんでした。

【グルテンが片頭痛や皮膚の病気に関係しているのか?】

この研究で特に注目したいのは、グルテンフリーダイエットが片頭痛やアトピー性皮膚炎の症状を改善する効果です。片頭痛は、お腹の中の細菌と脳の働きが関係していると考えられており、グルテンによる炎症がこの関係を悪くする可能性が指摘されています。

また、アトピー性皮膚炎などの皮膚の病気は、グルテンを含むアレルギーの原因となる食品を食べると悪化することの報告もあります。実際、研究ではグルテンを避けたグループで皮膚炎の症状が大幅に改善する傾向が見られました。かゆみや湿疹、乾燥肌などの症状でお悩みの人は、グルテンフリーダイエットを試してみるのも良いかもしれません。

【グルテンフリーダイエットの効果と注意点は?】

グルテンフリーダイエットの効果には個人差がありますが、今回の研究ではお腹の不調の改善が両方のグループで確認されました。特にグルテンを避けたグループでは、睡眠の質が上がったり、お通じや胃の痛みが改善したりしました。

ただし、グルテンフリーダイエットを始める前には、医師や栄養士に相談して、適切な指導を受けることが大切です。グルテンを含む食品を極端に制限すると、栄養のバランスが崩れたり、外食で食べられるものがなくなったりする可能性があります。また、知らないうちにグルテンを食べてしまうこともあるので、食品表示をよく確認する習慣が必要です。

グルテンフリーダイエットは、グルテンに関連する病気がある人の症状改善に役立つ可能性がある一方、健康な人が安易に始めるべきではありません。自分に合った食事療法を見つけるためにも、専門家のアドバイスを参考にしながら、体の変化をよく観察することがとても大切だと言えるでしょう。

参考文献:

San Mauro Martín, I., et al. "Effects of Gluten on Gut Microbiota in Patients with Gastrointestinal Disorders, Migraine, and Dermatitis." Nutrients, vol. 16, no. 8, 2024, p. 1228., doi:10.3390/nu16081228.

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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