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「私をお姉さまと呼んで」。ヒロインから転換、敵役の高飛車なお嬢さまを演じた久間田琳加がハマったもの

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)2024「新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!」製作委員会

櫻坂46の藤吉夏鈴が高校の新聞部の記者役で主演する映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』。新聞部と対立する名門文芸部の部長を久間田琳加が演じている。恋愛もののヒロインを多く務めてきたが、ちょうど「今までにない役をやりたい」と思っていたという。高飛車なお嬢さまで腹の内が読めない役どころで、物語にインパクトを残している。

今までにない役が目標だったんです

――恋愛ものなどでヒロインを多く務めてきた琳加さんですが、『新米記者トロッ子』では主人公の敵役のポジション。

久間田 本当にこういう役どころはあまりなくて、今回のオーディションのお話が来たときは、ちょうど今までにない役をやることを目標に頑張っていました。だから西園寺茉莉役はすごくやりたくて、決まったときは嬉しかったです。

――西園寺は文芸部の部長。文芸コンクールで最優秀賞を受賞していますが、お嬢さま育ちでもあるようですね。

久間田 親が建設会社の社長で、言葉づかいも「ごきげんよう」とか、わかりやすいお嬢さまのイメージはありました。生徒たちの中に混じると、みんなと違うエッセンスがあるから、どんな感じで演じようかと。監督の小林(啓一)さんとも、たくさんお話ししました。

――結果、どういうことを意識して演じたんですか?

久間田 常にフラットで、良いことを考えているのか、悪いことを考えているのかわからない。表情からどっちか読めない感じにしたいと思いました。まばたきをあまりしないとか、そういうことも小林さんから教わって意識しています。

意外と無理はなかったと思います

――主人公で新聞部に入る所結衣には「私のことをお姉さまと呼んで」と言ってました。

久間田 あそこはドキドキしましたけど、藤吉さんを目の当たりにしたら、本当にかわいくて! キラキラした目で「はい、お姉さま」と言ってくれるから、演じながら「悪くないかも?」と思っていました(笑)。

――どういうトーンで言おうとかは?

久間田 藤吉さんとお会いしてみて、どうしようか考えました。普段はもちろん言わない言葉ですし(笑)、今までは自分が年下の現場が多かったので、お姉さん側の役どころはかなり新鮮でした。

――「何ごとかしら」みたいなお嬢さま言葉は、言い慣れるようにしたんですか?

久間田 少女マンガを読むのが好きなので、そういう言葉づかいに憧れはありました。台本を読みながら話しているところを想像できて、意外と無理はなかったと思います。

――茶室でお茶を点てるシーンは、『お茶にごす。』で茶道部の部長を演じたお点前が発揮されたようですね。

久間田 そうなんです! お茶を点てることは当日まで聞いてなくて、セットがあったから「やってみる?」となって。監督はたぶん『お茶にごす。』のことは知らずに「雰囲気でいい」と言われましたけど、元茶道部長としては、そういうわけにはいきません(笑)。結構前のドラマでしたけど、こう点てて、こう持ち上げて……と覚えていて、自分でビックリしました。現場で「えっ、できるの?」みたいになって、ちょっとテンションが上がりました(笑)。

自分とは切り離して考えていました

――西園寺のキャラクターとしては、プライドが高いところもあるようですね。

久間田 なかなかのプライドでした。制服のリボンの色でカーストが分かれていて、外側から入りやすかったのと、撮影の日々を過ごしていく中で、皆さんとの関係性もできた感じです。

――結衣には「他人に劣ることを何より恐れている」とも言われていました。そういう部分は琳加さん自身にはありませんか?

久間田 自分とは切り離して、役として考えていたかもしれません。今まで読んできた本とかのエッセンスを交えながら。ただ、オーディションを受けて、先ほどお話ししたように「今この役をやりたい!」という気持ちは強かったので。その想いは西園寺と近いところがあって、反映されていた気もします。

――ちなみに、オーディションではどこかのシーンを演じたんですか?

久間田 後半の逆ギレするところです。

――あそこは急に冷たい顔になって怖かったです。

久間田 映画では淡々としていましたけど、オーディションでは全然違う感じで、声を張って演じていました。撮影したのが後半で、西園寺としていろいろしてきた中で、「こっちなんじゃない?」となったんです。

完成して「自分じゃないみたい」と

――ペンネームで作家活動をしている緑町このはを見つけ出すことを結衣に頼んで、何も答えてないのに「引き受けてくれるわね? 良かった」と一方的にたたみ込むところは面白かったです。

久間田 あそこは大変でした。私は人と話していても聞くほうが好きで、たたみ掛けていくことはあまりないので。どうしてもクセで相手の言葉を待ってしまいそうになって、苦労しました。ツラツラずっとしゃべっているシーンも多くて、噛んでしまったりもしています(笑)。

――言葉づらはやさしいけど、冷淡な感じが出ていました。

久間田 若干、近づいたらいけない感じの人ですね(笑)。小林さんの中で西園寺が出来上がっていたので、お話ししながら役を作っていきました。私は淡々と話すより抑揚が付きがちで、そこを「もっと抑えて」と言われて直したり。

――おっしゃった通り、心の内が読めない役になりました。

久間田 試写を観たとき、「自分じゃないみたい」と思いました。

本当の悪ではなくて寄り添ってあげたくて

――西園寺は自分の目的のために文学少女の結衣を利用しています。そういうところは共感はできませんよね?

久間田 できないですかね。でも、西園寺は本当の悪ではないというか。大人に巻き込まれていたり、弱い部分もちょいちょい見えてはいたので、嫌いにはなれないキャラクターでした。「何だ、この子は?」みたいにはならなかったです。

――「自分とは切り離して」とのことでしたが、心情がわかる部分もありました?

久間田 自分でわかるというより、「こういう関係ならこうなってしまうよね。その選択はしてしまうかも」みたいな。自分に近いわけではないけど、寄り添ってあげたいと思える役でした。終盤では西園寺の人間味が出てきて、わりと自分でも心を動かしながらできました。

――演じ方として、新しいアプローチもしたんですか?

久間田 そうかもしれません。いつもは自分の体験から「こういうことはあったな」と考えていましたけど、そういう意味では、また別の演じ方でした。初挑戦だった感じです。

空き時間はリラックスしてカメラ前で切り替えて

――高飛車な役を最初から作り込むというより、カメラが回ったら切り替える感じでした?

久間田 そうだったと思います。空き時間はみんなと普通にしゃべっていて、カメラの前に立ったら切り替えられて。自然に世界に入っていけました。

――空き時間はどんな感じだったんですか?

久間田 リラックスしていました。髙石(あかり)さんとは、シーンは全然かぶってないんですけど、夜ドラの『わたしの一番最悪なともだち』に一緒に出ていて、綱(啓永)くんも共演したことがあって、そういう作品の話をしていたり。あと、藤吉さんはその頃グループのライブがあったので、「みんなで行きたいね」と言っていました。

――櫻坂46のことは知っていたんですか?

久間田 もちろんです。「non-no」モデルにも、メンバーだった方がいらっしゃるので。

――同世代との共演は刺激になることが多いですか?

久間田 そうですね。綱くんとは久々の再会で懐かしい気持ちになりながら、「今回はこういう感じで来るんだ」と思ったり。髙石さんも映像で観ていて、やっとお会いできたと勝手に嬉しくなりました。勢いがある役で、カフェで詰められるところは本当にドキッとしてしまう感じでした。

かわいい妹ができた感覚でした

――撮影で特に印象深かったシーンはありますか?

久間田 やっぱり私は藤吉さんとのシーンが多くて、かわいかったなという想いが強いです(笑)。妹ができた感覚。そういう気持ちになったのは初めてでした。すごく楽しかったし、嬉しかったです。

――映画が完成して、改めて作品としての面白みは、どんなところに感じました?

久間田 ありそうでなかったようなお話で、台本を読ませてもらったときは、どういう映像になるのか想像がつかなかったんです。試写を観たら、すごいスピードで話が進んでいく中で、藤吉さんのピュアさがとてもかわいくて、癒されながら楽しめました。

――目標にしていた初挑戦の敵役で、収穫は大きかったですか?

久間田 はい。役の見せ方についてたくさんアドバイスをいただいて、映像を観るまでドキドキしましたけど、自分でも今までとは違うと感じられて。また新たな形でのターニングポイントになったと思います。こういう役柄も広げていければいいなと。

――『わたしの一番最悪なともだち』では就活生から新入社員まで演じて、今回はまた高校生役でしたが、これからは社会人の役が増えていきますかね?

久間田 学生役もまだ大丈夫かなとは思います(笑)。でも、OLさん役はやりたいです。今まで制服を着る役のほうが多かったので、恋愛が主軸でないお仕事ドラマで、働く女性の役もやってみたいと思っています。

CMのお仕事から野球を観に行くように

――西園寺は文芸部の部長でしたが、琳加さんは文学には馴染みはありますか?

久間田 遠い世界ですね(笑)。マンガはいっぱい読むんですけど、学生のときの読書感想文も苦手でした。大学のレポートでも、いつもいかに文字を埋めるかを考えていて(笑)。

――最近のお仕事絡みだと、プロ野球のセ・パ交流戦のCMに出演されていましたが、野球には興味あったんですか?

久間田 昨年末にWBCの特番のお仕事をいただいて、興味を持ち始めたところでの交流戦のCMでした。今も勉強中ですけど、球場にも2回観に行きました。どっちも神宮球場のヤクルトの試合で、ひとつが交流戦の西武ライオンズ戦でした。

――プライベートでハマるかもしれないと。

久間田 めっちゃハマりそうです。今はまた別の作品に入ってますけど、落ち着いたらまた観に行こうと思って、試合日程のスクリーンショットを撮っています。

生の観戦で熱い想いが伝わりました

――ひいきのチームもできたんですか?

久間田 まだ探し中です。たまたま都内だから神宮球場に行きましたけど、東京ドームも行ってみたくて。こういう話をすると、いろいろな方に「〇〇を応援して」と言われすぎて、悩みどころです(笑)。

――琳加さんって、あまりスポーツのイメージはありませんでした。

久間田 部活で体操をやっていて、ソフトボール部にも3週間だけ入ってましたけど(笑)、観ることはあまりなくて。WBCの過去の映像とかを繰り返し観て、「皆さん、こんなに熱い想いでやっているんだ」と思いました。生で観たら、それがより伝わった感じです。

――WBCだと、最後の大谷さんが三振を取ったところとか?

久間田 それもありますし、特番のときにイチローさんやダルビッシュさんの映像も振り返ったんです。当時の私は小さかったけど、そのときにちゃんと観たかったと思いました。

ティンパニーはできなくて泣きそうになって

――さらに少し前だと、『さよならマエストロ』ではティンパニーも叩けるようになったんですよね?

久間田 なりました! 今でも空き時間にテーブルを叩いたりしちゃいます(笑)。クラシックもよく聴いています。

――練習は相当したんですか?

久間田 半年くらいやっていました。7月くらいから始めて、10月から撮影に入って、クランクアップまでずーっと。

――最初から飲み込みは早いほうでした?

久間田 いや、いや、いや(笑)。最初は本当に「ついにやってもできないことにブチ当たってしまった……」と思って、本当に泣きそうになりました。映像を何回観ても覚えられなくて。

――素人目には、ティンパニーはバイオリンとかと違って、とりあえず音は出てメロディもないから、何とか行けそうにも思えますが。

久間田 でも、リズムが大事で、真ん中にいて重要な音を出さないといけないから、プレッシャーも大きくて。打楽器の先生方、生徒さんたちに教わって、どうにかしなければと必死に練習しました。

20代になって自分の体をいたわってます

――『新米記者トロッ子』は去年の夏に撮影したそうですが、今年の夏も仕事でお忙しいわけですか?

久間田 そうなっています。お休みがいただけたら、旅行に行ったりしたいです。夏は四季の中で一番好きなので。暖かいと気持ちが上がります。

――だけど、最近の暑さは度を越していませんか?

久間田 若干そうですね(笑)。去年の『トロッ子』の撮影でも夜までジメジメしていて、みんなで「暑い、暑い」と言ってましたけど、今の現場でも水や塩分をたくさん摂ったり、かなり対策をしています。昔はいろいろやらなくても大丈夫だったのに、体が追い付かなくなってきて。やっぱり20代は10代と違うんだなと、自分をいたわっています(笑)。

――かき氷を食べに行ったりはします?

久間田 それも10代の頃は行ってましたけど、今は本当にないですね。

――逆に、仕事終わりのビールが楽しみになったり?

久間田 確かに、家で飲むときもあります。ビヤガーデンに行ってみたくて。20歳になったときがコロナ禍だったので、外でワイワイ飲むことに憧れがあります。

――20歳になって、すぐビールに馴染んだんですか?

久間田 すぐでもなかったです。練習しました(笑)。

――ブラックコーヒーは20歳直前まで飲めなかったそうですが。

久間田 懐かしい(笑)。今はブラックコーヒーがないと働けないくらい、好きになりました。

選手の名前を球場のごはんで覚えていて(笑)

――秋から今年の残りにかけては、やっておきたいことはありますか?

久間田 やっぱり野球を学びたいです! 別のシリーズがあるんですよね?

――クライマックスシリーズ、日本シリーズとありますね。

久間田 私の野球は始まったばかりで、1年ちゃんと通して観てみたいです。

――そんなにハマったんですか。ひいきチームはまだないとのことでしたが、推しの選手もいませんか?

久間田 今後見つけていきたいです。球場で売っているごはんに選手プロデュースのものがありますよね。今はそれで名前を覚えていて(笑)。「これがあの海鮮丼の人か」みたいな。

――プレイより先にごはんで(笑)。それで、どんな選手を覚えたんですか?

久間田 今のところ、ヤクルトのオスナさんのケバブを2回食べました。それでファンになるかはわかりませんけど(笑)。

レプロエンタテインメント提供
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Profile

久間田琳加(くまだ・りんか)

2001年2月23日生まれ、東京都出身。

2012年に「nicola」のモデルオーディションでグランプリ。2017年8月から2022年3月まで「Seventeen」、2022年6月から「non-no」で専属モデル。女優としてドラマ『マリーミー!』、『お茶にごす。』、『ブラザー・トラップ』、『君に届け』、『こっち向いてよ向井くん』、映画『おとななじみ』、『夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく』などに出演。映画『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』が公開中。

『新米記者トロッ子 私がやらねば誰がやる!』

監督/小林啓一 脚本/大野大輔 

出演/藤吉夏鈴(櫻坂46)、髙石あかり、久間田琳加、中井友望、綱啓永、髙嶋政宏ほか

テアトル新宿、グランドシネマサンシャイン池袋ほか全国ロードショー

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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