「公的年金は現役で働いている世代が年金を受け取っている高齢者を扶養する制度」知っている人は66.8%
重要な社会制度ではあるが、仕組みをしっかりと理解している人は案外少ないのが公的年金制度。公的年金制度の基本的な仕組みはどこまで認知されているのか。内閣府の世論調査「生活設計と年金に関する世論調査」(※)の調査報告書から確認する。
次に示すのは公的年金の制度に関する基本的な仕組みや役割について、その実情を知っているか否かを尋ねたもの。公開資料では複数項目にわたって問われている内容を一つにまとめている(項目の順番は資料から抽出した順)。
学生も含めて20歳以上は皆が皆、公的年金に加入する、当然年金保険料を支払う必要があるということを知っている人は82.0%。何らかの事情で払えない場合も、関係官公庁に問い合わせることで(ペナルティはあるが)減免措置を受けられるので、義務であることとともに知っておきたい話には違いない。
次に年金は原則として65歳から受け取り始めるが、本人の希望により60歳から75歳の間で受け取り始める時期を選択できる実情を知っているのは73.0%。公的年金制度は概念として、そして今件設問の選択肢にもあるが、本人の受け取り開始期間から亡くなるまで年金を受け取れる仕組み。受け取り開始期間を早めるほど月あたりの給付額は減り、遅くするほど給付額は増える。概算的に一人あたりの一生涯受け取れる年金の総額が平均的に同じとなるように計算されている。ただし本人がいつ亡くなるかは分からないため、多分に運試しのところもあり、それゆえに老後の生活設計は必要不可欠になる。
公的年金制度は現役で働いている世代が年金を受け取っている高齢者を扶養する制度であることを知っている人は66.8%。公的年金制度は自分の年金保険料を積み立てて、支払期間以降に払い戻しされる仕組みだと思っている人は少なくない。あくまでも年金保険料は将来の年金受け取り資格を得るための料金に過ぎない。
支払った保険料や期間に応じて年金が受け取れる実情を知っている人は62.5%。支払期間は20~60歳の40年間で満額の年金を受け取れるようになるが、それより短いと受取額も短くなる(65歳未満は60~65歳まで任意加入で年金保険料を支払い続けることができる。また老齢基礎年金の資格期間(10年)を満たしていない65歳以上70歳未満の人は最長で70歳まで年金保険料を支払い続けられる)。また、支払期間と免除期間の合計が10年に達していないと受取資格そのものが原則として無くなる。
公的年金制度に加入することで、障害がある人や世帯の生計を支えている人を亡くした人も、保障を受けられる事実を知っている人はそれぞれ59.6%・77.3%。年を取ってから給付される年金は老齢年金と呼んでおり、この他に「重度の障害を負ったとき」(障害年金)や、「一家の稼ぎ頭が亡くなったとき」(遺族年金)にも所定の給付を受けることができる。つまり公的年金制度は部分的に医療保険の役割も果たしていることになる。
ちなみに男女別・年齢階層別で若年層の18~29歳と、年金給付を受け始めている人がいるであろう60代、そして年齢の観点では全員が年金給付を受けている対象となっている70歳以上の動向を確認したのが次のグラフ。
男女とも18~29歳は知っている人の割合は低く、受け取り開始時期となる60代は高い値を示すが、70歳以降は再び低い値となる。もっとも、受け取りに直接関係する話は70歳以上でも高い認識率を維持している。
ちなみに「現役で働いている世代が年金を受け取っている高齢者を扶養する制度」に関しては、18~29歳では女性の方が、60代と70歳以降では男性の方が高い。もっともどの属性でもよくて7割程度でしかなく、見方を変えれば3割台から4割台の人は「年金保険料を積み立てて、自分が年を取ってから払い戻しされる」と考えている可能性がある。年金にかかわる話で色々と誤解が生じる機会があるが、その多分はこの事実と「障害がある人や世帯の生計を支えている人を亡くした人も保障を受けられる」について、知らないがためのもの。もう少し認識率を高める方策を求めたいものだ。
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※生活設計と年金に関する世論調査
2023年11月2日から12月10日にかけて日本国内に居住する18歳以上の日本国籍を持つ男女から層化2段無作為抽出法によって選ばれた5000人に対し、郵送法によって実施されたもので、有効回答数は2833人。男女比は1336対1497、年齢階層比は18~19歳52人・20代227人・30代309人・40代400人・50代498人・60代540人・70歳以上807人。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
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