世の中の情報って多すぎませんか? 速すぎませんか?
インターネットの普及により、情報の価値観はこれまでと大きく変わってしまった。その変容にとまどっている人も多いことだろう。今回は博報堂DYメディアパートナーズのメディア環境研究所が2024年6月に発表した「メディア定点調査2024」(※)の公開値から、情報に関して人々がどのような認識を持っているのか、「多すぎるか否か」「速すぎるのか否か」の2点の観点で見ていくことにする。
次に示すのは情報に関する2つの設問「世の中の情報量は多すぎる」「世の中の情報のスピードは速すぎる」について、同意できる人の動向を属性別に記したもの。例えば「世の中の情報量は多すぎる」の全体は58.5%なので、全体の58.5%は「世の中の情報量は多すぎる」と(おそらくは否定的な意味で)思っていることになる。
全体では6割近くの人が「世の中の情報量は多すぎる」と認識している。多すぎて処理しきれず困ってるのか、判断に迷ってしまうのか、受けとめきれなくて大切な情報を取りこぼしてしまっていないか心配になるのか、影響はケースバイケース・人それぞれだろうが、肯定的な意味でないことだけは確かだ。一方で「世の中の情報のスピードは速すぎる」は46.6%と半数近く。速すぎて取得や把握、理解、取捨選択などをする余裕がないこともあるだろう。
属性別で見ると、男女別では男性よりも女性の方が、多さや速さを感じている人は多い。特に「世の中の情報量は多すぎる」の声は、女性では63.2%に達している。年齢階層別では、若年層で高い値が出る傾向があり、「世の中の情報量は多すぎる」は30代、「世の中の情報のスピードは速すぎる」は20代がピークとなっている。逆に高齢層ほど値が低くなっており、意外さを覚える人もいるかもしれない。
これを経年推移で見たのが次のグラフ。
多少のぶれはあるが、多すぎる・速すぎる双方とも値は増える傾向にある。原因について元資料では言及がないものの、おそらくはインターネットやスマートフォンの普及などにより、情報の取り扱いが楽になり、より多くの情報がやり取りできるようになった一方で、それを処理する人間そのものの適応が進んでいないのが一因にあるのだろう。2020年から2021年にかけて減少する動きがあるのは、新型コロナウイルスの流行で対象となる情報が求められたことや、在宅時間が増えてゆっくりと精査する余裕が生まれたのが原因かもしれない。
現状では6割近くの人が「世の中の情報量は多すぎる」と考え、5割近くの人が「世の中の情報のスピードは速すぎる」と考えている。人の情報処理能力に大きな変化がなければ、貯めておける情報量には限度があるから、必然的にところてん式に次から次へと吐きださねば、新しい情報を得られなくなる。一部で言われている、流行のはやりすたりの間隔が短くなったのも、この「世の中の情報量は多すぎる」「世の中の情報のスピードは速すぎる」と認識する人が増えている、昨今の情報の多さ・速さが原因の一つなのかもしれない。
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※メディア定点調査2024
調査方法は郵送調査方式。調査期間は2024年1月26日から2月9日。東京都を対象にRDD(Random Digit Dialing)方式で選ばれた15歳から69歳の男女個人に対し調査票が送付され、643通が回収された。各値は2023年の住民基本台帳を基に年齢階層・男女でのウェイトバックが実施されている。
過去の調査では利用機器に2014年からタブレット型端末が追加されている。2013年までは(ノート)パソコンと同一視され回答にくわえられていた可能性もあるが、2014年以降は機器として独立項目が設けられたため、以前と比べてメディア接触時間の合計が上乗せされている可能性が高い(メディア接触時間が有意で増加している)。
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(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。