からあげ弁当に初インタビュー。クセのあるバンド名の奥にある素顔を焼きそばに聞いた
明るいからこそ勢いとノリだけだと思われがち
―― ……焼きそばさん、屈託というものが全然ないですよね。 「え? くだく?」 ――屈託です。 「何ですか? すいません、日本語不足で」 ――えーと(笑)、明るい人だなってことです。 「あぁ、それは自分でも思います。うん。明るいと思う。でもこれ、自分で言いますけど、明るいからこそ勢いとノリだけで音楽やってると思われがちなんですよね」 ――はい。わかります。 「でもね、応援ソングとかちょこちょこ書いてますけど、それは僕、12年くらい野球やってた経験があるからで。一回プロ野球選手になる夢が完全に閉ざされたんです。当時の悔しかった思い出とか諦めた時の気持ちとか、いろいろ経験がないと書けへん歌詞ではあると思うんですね」 ――プロ野球。本気で目指してました? 「はい。中学校の時に全国大会に出て一番バッターになって〈あ、俺プロになれるわ〉と思って。高校も、家から離れて寮生活の学校を選んで。それでいざその高校に行ってみたら、大阪とか京都のエース、四番がダーッと集まる高校で。まぁ体格の違いもそうやし、技術的な面でも現実が見えてしまって。二年までは頑張ったけど、そこで初めてこれは厳しいなぁって思ってしまって。で、そこから音楽始めたんです」 ――悔しさの受け皿に、音楽がなってくれた。 「それはずっとそう。その時に限らず、野球してる時もずっと音楽聴いてた。中学校の頃はワンオクの〈キミシダイ列車〉を絶対聴いてから試合行ってましたね。負けた夜とか、彼女に振られた夜とかも、いつでも音楽が寄り添ってくれて。だから内に秘めてる思い、音楽が好きな思いは人以上に強いものがあるし。そこは曲で伝えていきたいなと思ってますね」 ――そういう感覚が、今回のラストナンバー「そんな日々を生きていく」に出ているような気がします。 「うん。〈そんな日々を生きていく〉、これ、からあげで一番好きかもしれない。最近いろんなバイトしてるんですけど、怒られて〈はぁー〉ってなった時に、〈あぁ、こんな時に聴く曲なんやな〉と思った。〈もうすっごいいい曲やな!〉って」 ――ははは。自分で言う。 「そう。中学でワンオクに感じたことを、今は自分の曲で感じてる。でまぁ、全国のどっかにも、俺みたいにこれがガツンと響いてる奴がおるんかなと信じてますね」 ――ほんとに明るいな(笑)。これはメディアの責任でもあるけど、音楽ってどこか暗い人がやるイメージないですか? 「あぁ。ありますあります。それこそ僕らの事務所の大先輩、銀杏BOYZの峯田さんとか、MCも〈ひとり部屋で俺はギターも握らずに……〉みたいな感じですよね。それって強いじゃないですか。めっちゃ説得力あるし、お客さんも〈自分と同じ状況に峯田さんも立ってるんだ、そこから頑張ってはるんや〉みたいになる。そういう人が作る音楽、もちろん俺も聴いて力をもらってきたから。ただ……俺がそっちのジャンルに立とうとしても、もう勝たれへん」 ――そもそも明るいんだもんね。 「そう(笑)。でも俺もちゃんと挫折はしてきたし、ちゃんと夢を12年間追っかけてきた。けど、わざわざしんみりした言葉でそれ綴っても〈いやお前、こういう時だけ何寄り添ってんねん?〉みたいになっちゃうんですよね。そこは僕のブランディングミスかもしれない(笑)。でも自分を隠して生きるのも嫌やし。だったらまったく違うことで勝負しよう、そういう人たちには作れん音楽をやろうって思う」 ――あぁ。だからこういう歌になるの、よくわかりました。最初はもっと天然のバカを想像してましたけど。 「はははは! 天然のバカでおったほうがいいんですけどね。焼きそば、なんて言うからには。こんなに内々のこと喋られても気持ち悪いと思うんですけど」 ――いや、いいと思います(笑)。でもこの誤解、今後もずーっと続くでしょうね。 「そうですね。その誤解、もはや解かんくてもいいかなと思ってます。むしろそういうイメージであってほしい。〈焼きそば、いつもアホやなぁ〉でいいと思う。ファンの前ではそんな話はせんし。もちろんこういう雑誌とかね、ちゃんと見る人には〈実は真面目なんや〉って伝わってもいいけど」 ――「アホなバンドっぽいけど、意外と曲がいいんだよ」くらいでOKですか。 「もちろんです。むしろどんだけそういう人を増やせるか。そういう意見を聞くのがやっぱりバンドやってて楽しいところ。〈からあげ弁当、名前アレやけど、ライヴめっちゃカッコいい!〉って言われるのがいちばん気持ちいいから。そういう人をいかにダーッと増やしていくかが勝負どころですね」
石井恵梨子