<北朝鮮内部>金正恩氏肝いりの「地方発展20/10政策」が動き始めた 建設地を選定し動員作業始まる 「うまくいくはずない」「1年中動員に駆り立てられる」と不満の声
◆今ある工場が動いていないのに何のための新工場建設か
――「地方発展20/10」は都市と地方の格差を解消するのが目的だと言うがうまくいくだうか? 「地方発展20/10」で、人民生活を画期的に変えるなどと言っているが、早くも不満がたくさん出ている。工場がないから物資がないのではなく、今ある工場には原材料もないし機械設備が老朽化しているからまともに動いていないであって、新しく工場を建てたからといって、いったい何が変わるのかという意見が多い。政府は、工場建設に必要な資材や設備は自ら生産した物(国産品)を使えと強調しているのだが、輸入なしに(調達が)不可能なものが多いのに。これらをどうするつもりなのだろうか。 ――漁業が盛んな漁郎郡はうまくいくのではないか? 漁郎郡に作る水産物加工工場では、生産した水産物を人民に販売すると宣伝しているけれど、問題は、いったい誰がお金を払って買ってそれを食べられるのかということ。今、市場では商売もできなくしていて稼ぐこともできないし、(職場に出勤しても)労賃でまず食糧を買わないといけない。水産物をたくさん生産したとしても、金が無くて買える人はあまりいないはずだ。
◆両江道は僻地に新工場、他工事止めて集中動員
両江道では金亨稷(キムヒョンジク)郡に新工場を建設することになったと、両江道に住む複数の取材協力者が2月中旬に伝えてきた。金亨稷郡は、金正恩氏の曾祖父の名を冠した朝中国境の町で、標高が1000メートル近くあり主産業は林業だ。両江道の取材協力者は金亨稷郡への建設について次のように述べた。 「なぜ金亨稷郡のような交通不便で辺鄙な所に工場を建てるのかという疑問が多い。すでに工場の建設工事への動員が始まっていて、普天(ポチョン)郡の住宅建設や恵山(ヘサン)市の公園建設に投入されていた人員は皆撤収させていて、金亨稷郡に送り込まれことになったそうだ。道内の他の建設はいったんすべて止めるということだ」
◆人々を煽動して1年間動員に駆り立てるのが目的ではないか
金亨稷郡がただ辺鄙だというだけではなく、地方に新たに工場建設するというプロジェクトそのものについて、この協力者は疑問を呈する。 「人民生活を高めるためだとか言っているが、今ある工場すら、原料も電気も供給できずにまともに動いていないのに、なぜ別の工場を作ろうとするのか理解できない。設備投資して活性化させるのだそうだが、どこに金がありますか? 幹部たちは頭を抱えていると聞いた」 都市と地方の格差解消という題目は悪くない。だが、実効性に問題があるとしたら、金正恩氏が大々的にこのプロジェクトを始めようとする意図は何なのだろうか? 「2024年は、地方建設という名分で1年中動員され、建設を支援しろと宣伝することに明け暮れると思う。(政府は)ある時は『強盛大国になる』と言い、またある時は『社会主義の勝利が見える』と言っていたが、実現できたものは何もない。今回も、道ごとに課題を与えて、あれこれとやるべき仕事を作って人々を煽動して駆り立てるつもりなのだろう。そんな不平不満を言う人たちも多い」 ※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取り合っている。