「掲示板ジャック」再び? 選挙ポスター問題、「ルールなし」で衆院選へ
一方、選挙と無関係のポスターが張られるのを防ぐため、独自に動いた自治体もある。鳥取県だ。 公選法の趣旨にのっとり、選挙運動以外の目的でポスターを掲示することを禁じ、違反した場合は選管が撤去できるとした条例が10日、県議会で可決された。 総務省によると、選挙ポスターに関する単独の条例を制定している例は他に把握していないという。条例の施行は17日で、衆院選も対象になる。
世界では少数派のポスター掲示板
海外の状況はどうなのか。 各国の選挙制度に詳しい早稲田大の日野愛郎教授(政治学)によると、日本のように公営のポスター掲示板が設置される国は世界でも少数という。アメリカには一切なく、道路標識や商店、民家の庭先に自由に掲げることができる国が多い。フランスやイタリア、オランダといったヨーロッパの一部の国では掲示板が見られるが、その設置箇所は日本よりはるかに少ないという。
インターネットが普及している現在、掲示板は必要なのか。日野教授は「報道が少ない地方選挙の場合、掲示板が設置されて初めて選挙が行われることを知る有権者もいる。また、掲示板は候補者全体を把握できるため、どんな候補者がいるかを効率よく知ることができる」と指摘する。 ただし、掲示板の設置に公費が使われていることから、販売や譲渡を禁止し、設置場所も公共施設や駅前などに限定して費用対効果を高めるべきだとも訴える。日野教授は「『自由で開かれた公正な選挙を保障する』という公選法の理念を維持しつつ、新しい仕組みを考える時期にきている」と話す。
専門家「動物写真の一律禁止は言論封殺」
選挙制度に詳しい法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)は別の論点を示す。ポスターの内容を規制する場合は、憲法が保障する「表現の自由」とのバランスを考えるべきだと指摘する。 たとえば、動物実験に反対する人が動物の写真を張ったり、マタニティーハラスメント防止を訴える人がおなかの大きい女性の写真を張ったりする場合は、いずれも重要な政治表現になる。 「動物はダメ、女性はダメとなると、かえって自由な言論を封殺することにつながる。権力者にとって恣意(しい)的な解釈がされないように、規制の内容については慎重に議論すべきだろう」と話す。【遠藤浩二、洪玟香】
※この記事は、毎日新聞とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。