篠原涼子「経験を元手に演じるからこその真実味がある」愛に身を投じる女を生きる舞台『見知らぬ女の手紙』
観客のエネルギーが舞台に変化を起こす「客席のすすり泣きする声で私もさらに感情が表に出て、芝居が変わったりする」
狂気か、純愛か。篠原さんは一方的な愛の形にも美点を見いだした。 「“女”は、彼に振り向いてもらえなくても、“全部私が悪いのです”と内助の功のように、彼に寄り添っていきます。“私はこれほどまでに彼を愛している。それだけで十分なんだ”と、思える彼女の包容力がすごいですね」 同時に、演じる人物に共感できなくても「共感し過ぎて、すべて分かった気になってしまうのもつまらないですね」と篠原さん流のロジカルな役者論も明かす。 「空想を広げて役を作ってみるからこその楽しさもあり、でも一方で篠原涼子という生身の人間が、経験を元手に演じるからこその真実味があって、お客様に伝わります。どこまで自分の経験・知見を出すべきなのかの試行錯誤が、俳優として必要なプロセスだなと思います」 舞台ならではの、生の緊張感にも期待する。 「どんな角度からも見られていますし、幕が上がれば下りるまで、1時間、2時間とノンストップで続くスリリングさもあります。稽古で作ってきた空気にお客様が加わることで、エネルギーがまとまって生まれる力が、舞台のすごみだなと思います。 舞台と客席の感度が合う瞬間もあって、客席のすすり泣きする声で私もさらに感情が表に出て、芝居が変わったりするんです。結構、見ている皆さんの空気感も伝わります」 今作では、手紙を読んでいる篠原さんと、男として踊る首藤さんの二人芝居で舞台が進んでいく。 「私が手紙を1枚1枚読み終わったら、舞台の上に捨てていくという演出です。散らばっている手紙が積もっていって、客席から見たら幻想的な景色になるかも。もし間違えて客席に落としてしまったら、お客様に持って帰ってもらえるんでしょうか(笑)。一緒に舞台の醍醐味(だいごみ)を味わっていきたいですね」 生の演劇で、篠原さんが見せてくれる愛の形に興味は尽きない。 篠原涼子(しのはら・りょうこ) 1973年8月13日生まれ、群馬県出身。B型。1990年、ユニット・東京パフォーマンスドールに加入。’94年に小室哲哉プロデュース“篠原涼子 with t. komuro”としてシングル「恋しさとせつなさと心強さと」をリリースし大ヒットを記録。’05年に主演を演じた、ドラマ『溺れる人』(日テレ系)で第31回放送文化基金賞演技賞を受賞し、以降『anego』(日テレ系)、『アンフェア』シリーズ(フジテレビ系)、『ハケンの品格』(日テレ系)、『オトナ女子』(フジテレビ系)、『イップス』(フジテレビ系)など多数作品に出演。’18年公開の映画『人魚の眠る家』『SUNNY 強い気持ち・強い愛』では、高い演技力が評価され、第43回報知映画賞主演女優賞を受賞。2024年12月より舞台『見知らぬ女の手紙』公演が控えている。 大宮高史
大宮高史