【杉咲花・主演ドラマ『アンメット』】杉咲花と若葉竜也という「二人が並んだ奇跡」とは?
杉咲花と若葉竜也の好演とともに、大きな感動と反響を呼んだドラマ『アンメット~ある脳外科医の日記~』。今回はこのドラマの考察、後編をお届け。
杉咲花と若葉竜也という二人が並んだ奇跡
どんなに脚本が素晴らしくても、ドラマが持つメッセージを最終的に視聴者に届けるのは役者だ。それだけに演じる役者の技量の高低は、そのままメッセージがどれだけ視る人に伝わるかという度合いにつながっていくと思う。そういう意味で、『アンメット』で主演、そして相手役を務めた杉咲花と若葉竜也は、とにかく素晴らしかった。いまだかつて、こんなにレベル高く、崇高で、そして美しい演技というものを見たことがない、と感じた人も多かったのではないだろうか。本当に、大袈裟でも何でもなく。 とくに今作では、若葉竜也という、民放ドラマにはほとんど出てこない硬派な実力派俳優をキャスティングできたことは大きかっただろう。杉咲の演技力が誰もが認めるところであるのは言うまでもないが、そこに、淡々としていながらも何とも言えない迫力とアクの強さをたたえた若葉が対峙したとき、まさに神がかった相乗効果が生まれた。二人がただ並び、自分の中の奥深いところに潜む想いを静かに語り合うラストは、あまりに静謐で、厳かで、息をのむような感動があった。今後恋愛ドラマについて語られるとき、このシーンが希代の名シーンとして語り継がれていくことはおそらく間違いないだろう。 素晴らしい脚本と、素晴らしい演じ手。当たり前だがドラマ、とくに恋愛ドラマにおいては、この2つが他のどのジャンルよりも重要になるのだということを、皮肉にも恋愛をうたっていない『アンメット』が教えてくれたように思える。 ギャラクシー賞の受賞に際して『アンメット』のプロデューサーは、「偉大な座長がまだ誰も見たことのない景色を見せてくれた」と表現していた。本当に、この言葉がすべてだと思う。この春、私たちは、まだ誰も見たことのなかった史上最高の愛の物語を見せてもらった。そして同時に、終わったと言われる恋愛ドラマの可能性も、再び信じさせてもらうことができたのではないかと感じている。
PROFILE
書き手 山本奈緒子 Naoko Yamamoto 放送局勤務を経て、フリーライターに。「VOCE」をはじめ、「ViVi」や「with」といった女性誌、週刊誌やWEBマガジンで、タレントインタビュー記事を手がける。また女性の生き方やさまざまな流行事象を分析した署名記事は、多くの共感を集める。 Edited by 渕 祐貴
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