里子を育てる同性カップル 同じ名字に変更 認められた理由…自宅チェック、裁判官らとの面談経て
同性パートナーとともに里子を育てる愛知県の男性が今年3月、パートナーと同じ名字に変更することを名古屋家裁に認められた。カップルがオンラインでの取材に応じ、変更が認められた経緯について説明した。
自宅訪問
戸籍法では「やむを得ない事由」がある場合、家裁の許可を得て名字を変更できるとされる。男性は2018年からパートナーと同居し、昨年からは2人で里子を養育してきたが、病院の受診時などに2人の関係を意に反して説明させられるなどの支障があったとして、昨年11月、同家裁に審判を申し立てた。 男性によると、申し立て後、家裁から「裁判所としても慎重に取り扱いたい」と連絡を受け、調査官の自宅訪問や家裁での裁判官らとの面談が計3回行われた。 自宅訪問では、部屋をどう使っているのかや、1日の生活リズム、家事や家計管理の分担など、里子を含めた3人の生活ぶりが細かく聞かれた。掃除が行き届いているかなど、子どもを育てるにあたっての衛生状況についてもチェックがあり、飼い犬の毛が室内に落ちていないことについても評価されたという。
面談で確認
裁判官との面談では「万が一別れたら、婚姻の手続きとは違い名字を戻せないけど大丈夫ですか」などと聞かれたといい、男性は「最初から別れるつもりで付き合っていないです」と答えたという。男性は「2人が異性婚の夫婦と同じような共同生活をしているのか、簡単に別れないのか、ということを確認したかったんだと思う」と推測する。 また、裁判官からは「病院の受診時に名字が同じでも、最終的に関係を伝えなければいけない支障は残るのでは」など、名字の変更が支障の解消にどこまで寄与できるのかという観点からも、具体的な事例を挙げて細かく確認されたという。男性は「緊急時の救急車の付き添いなどの場面で名字が同じなら、少なくとも親族と思ってもらえ、関係性を尋ねられる回数は減るはずだ」と訴えた。 面談の最後に「気持ちの部分はどうですか」と問われたことが印象的だったという男性。「結婚すると名字が変わるものだと思って生きてきた。認められたら、より夫婦に近づけると感じます」と答えると、裁判官からは「それが聞けたら十分です」との返事があったという。 同家裁は今年3月14日、共同生活の様子などから2人の関係を「夫婦と同様の婚姻に準ずる」と認定。性的少数者は差別や偏見に基づく不利益な取り扱いを受ける可能性があり、そうした中、名字が異なることで意に沿わないカミングアウトを強いられるのは社会生活上の著しい支障に当たるとして、名字を変更する「やむを得ない事由」があると結論づけた。 男性はすでに名字変更の手続きを済ませたという。パートナーは「私たちにとって現段階での最良の選択が名字の変更だった。(異性婚との)不平等は解消していないが、新たな選択肢が示せたのはよかった」と語った。 男性は、同性婚を認めない民法などの規定は憲法違反だとして、国に損害賠償を求める訴訟を起こし、昨年5月に名古屋地裁が違憲判断を示した。現在も名古屋高裁で訴訟は続いている。