中国広州の街角に漢方茶「涼茶」スタンド 医食同源、コロナ禍で伝統療法が再評価
医食同源の考えが根付く中国南部広東省や香港の街角には、コーヒースタンドならぬ漢方茶「涼茶」スタンドがあちこちにある。蒸し暑い夏、風邪気味の時、寝不足でだるい日―。症状に合う涼茶を選んで店先で飲み、身体を整えるのが昔からの習慣だ。新型コロナウイルス禍を経て伝統療法が見直されている。(共同通信=花田仁美) 広東省広州市の旧市街にある「黄氏祖伝百暖涼茶店」は開業して40年余り。中国の伝統医学「中医」を学んだ先代が店を開き、その死後、妻の黄婉華(こう・えんか)さん(71)が店を継いだ。営業時間は朝9時から夜10時までで、メニューは5種類のみ。「隠居したら心身が鈍る」と毎朝涼茶を煎じる。 定番は約20種類の漢方を調合した「廿四味(ヤーセイメイ)」で、1杯7元(約140円)。粉末の葛根やタンポポなど店により使う生薬は異なるが、デトックス効果があるとされ、黒くて苦いのはどこも共通。慣れると癖になる味だ。
地元紙の広州日報によると、涼茶を飲む習慣が広まったのは清朝時代。広東省一帯は亜熱帯気候に属し、体内にこもった熱や余分な水分を取り除く手段として、身体を冷やす効果のある生薬を煎じて飲むようになった。涼茶といっても冷たいわけではなく、温かい飲み物だ。 涼茶店は労力と時間がかかる割に稼ぎは少ない。「なんとか食べていける程度。チェーン店はともかく、昔からの個人営業の店は減っている」と黄さん。息子も普段は外に働きに出ており、休みの日に店を手伝ってくれるという。 新型コロナ禍で市民の健康意識が高まり、ここ数年は1日当たり約80人と客足が伸びた。「伝統文化を見直す動きもあり、若者の来客が増えた」と笑う。 広州生まれの30代の男性ドライバーは「中国が貧しかった昔は、ちょっとした病気は涼茶で治した。今でも徹夜明けにはよく飲むよ」と話した。