「子どもの卒業式まで生きたい」余命3ヵ月の女性が起こした奇跡
経営者、アスリート、教育者、歴史上の偉人など、成功者と呼ばれる人は困難に直面した時にどのように考え、行動してきたのか。それを知ることはきっと、一度きりしかない人生を自分らしく生きるための学び・教訓となるはずだ。学校では教えてくれない、人生で本当に大切なこととは? 『毎週1話、読めば心がシャキッとする13歳からの生き方の教科書』より、一部を抜粋・再編集して紹介する。第2回の語り部は、諏訪中央病院名誉院長・鎌田實(かまた みのる)。 【写真】落語家・桂歌丸「辞めるんだったらいま辞めろ。いま辞めないんだったら生涯続けろ」
母から子供へ。命のバトンタッチ
僕が看取った患者さんに、スキルス胃がんに罹った余命3ヵ月の女性の方がいました。ある日、病室のベランダでお茶を飲みながら話していると、彼女がこう言ったんです。 「先生、助からないのはもう分かっています。だけど、少しだけ長生きをさせてください」 彼女はその時、42歳ですからね。そりやそうだろうなと思いながらも返事に困って、黙ってお茶を飲んでいた。すると彼女が「子どもがいる。子どもの卒業式まで生きたい。卒業式を母親として見てあげたい」と言うんです。 9月のことでした。彼女はあと3ヵ月、12月くらいまでしか生きられない。でも私は春まで生きて子どもの卒業式を見てあげたい、と。子どものためにという思いが何かを変えたんだと思います。奇跡は起きました。春まで生きて、卒業式に出席できた。 こうしたことは科学的にも立証されていて、例えば希望を持って生きている人のほうが、がんと闘ってくれるナチュラルキラー細胞が活性化するという研究も発表されています。おそらく彼女の場合も、希望が体の中にある見えない3つのシステム、内分泌、自律神経、免疫を活性化させたのではないかと思います。 さらに不思議なことが起きました。彼女には二人のお子さんがいます。上の子が高校3年で、下の子が高校2年。せめて上の子の卒業式までは生かしてあげたいと僕たちは思っていました。 でも彼女は、余命3ヵ月と言われてから、1年8ヵ月も生きて、二人のお子さんの卒業式を見てあげることができたんです。そして、1ヵ月ほどして亡くなりました。彼女が亡くなった後、娘さんが僕のところへやってきてびっくりするような話をしてくれたんです。