「甘すぎる」時代に阿部慎之助が巨人軍新監督に抜てきされたワケ 思い出す「衝撃の一発」事件(小林信也)
最初は投手だった
私が阿部を知ったのは彼が中央大学4年になる頃。シドニー五輪日本代表候補となり、日本ハムのキャンプに参加してエース岩本勉からバックスクリーンにホームランを打って話題となった。後に、長嶋巨人の陰の参謀とも呼ばれた井上浩一スコアラー(当時近鉄)が教えてくれた。 「阿部は高校時代、最初は投手だった。『捕手にした方がいい』と高校の監督に進言したのは私なんですよ」 井上は目を細めた。打撃とキャプテンシーの将来性を見抜いた名参謀の進言。捕手転向が阿部の野球人生を大きく変えたに違いない。 プロ入り後の阿部の実績は非の打ちどころがない。 01年、巨人の新人捕手では23年ぶりの開幕スタメン。初打席初安打初打点を記録。その年は127試合に出場し本塁打13本。盗塁阻止率も.353とまずまずだった。4年目には開幕からわずか33試合で20本塁打を打ち、当時20本までの世界最速記録(マーク・マグワイアの35試合)を更新した。生涯成績は打率.284、406本塁打。 巨人は開幕戦、東京ドームに昨季の覇者・阪神を迎える。誰もが緊張しがちな試合、阿部監督の一発、いや新たな気合注入が出るか、出ないか。妙なところに関心が高まる。 小林信也(こばやしのぶや) スポーツライター。1956年新潟県長岡市生まれ。高校まで野球部で投手。慶應大学法学部卒。大学ではフリスビーに熱中し、日本代表として世界選手権出場。ディスクゴルフ日本選手権優勝。「ナンバー」編集部等を経て独立。『高校野球が危ない!』『長嶋茂雄 永遠伝説』など著書多数。 「週刊新潮」2024年3月28日号 掲載
新潮社