内山拓也監督×細川岳『佐々木、イン、マイマイン』を振り返る 主演・藤原季節のサプライズ登場も
TOHOシネマズが邦画、洋画問わず“いま、気になる映画・映画人”をピックアップして観客へ届ける「TOHOシネマズ・ピックアップ・シネマ」が9月17日(火)、東京・TOHOシネマズ日比谷で行われた。第7弾となる今回の上映作品は、2020年に劇場公開された『佐々木、イン、マイマイン』。上映後には監督の内山拓也と、佐々木を演じ、内山監督との共同脚本も手がけた細川岳による舞台挨拶が行われ、ふたりは当時を振り返った。 【全ての写真】サプライズ登場した『佐々木、イン、マイマイン』主演の藤原季節 同作は、初監督作品『ヴァニタス』がPFFアワード2016観客賞を受賞し、人気アーティストのMVも手がける内山監督の青春映画。カリスマ的存在だった高校生“佐々木”とその仲間たちのドラマを通して、青春のきらめきと、もう戻らない日々への哀愁をストレートに描き出す演出が話題を集め、第25回新藤兼人賞をはじめ、さまざまな映画賞を受賞した。 内山監督は「当時、現場も含めて、いろんな協力を得たり、たくさんの人と積み上げていった時間が、自分の中で蓄積されているし、(参加した)みんなのことをすごく誇らしいなと思った」と述懐。『佐々木、イン、マイマイン』を通して、「出会った人たちが財産になっていて、仲間が増えたり、観てくださる方のことも愛おしく思えるようになった」といい、「成長させてもらった部分もあるので、恩返しという言い方はおこがましいが、そのためなら、何でもしようと思えるようになった」と心境の変化を語った。 同時に「自分自身は変わってはいないつもり」とも語り、「強いて言うなら、当時の違和感だったり、“もっとこうなったらいいのにな”ということを、ちゃんと責任をもって口にするようになった。今も戦っているつもりだが、戦い方を変えた」と明かした。 また、『佐々木、イン、マイマイン』には現在、大ブレイク中の河合優実が出演しており「当時から異彩を放っていた。場慣れしているじゃないけど、すごく肝が据わっていたし、目線だったり、佇まいだったり、僕の思っている以上のことをくみ取ってくれた」と4年前の様子を振り返った。 一方、細川は「皆さんに応援してもらえる映画になっていたんだなと実感している。感謝しています」と客席を見渡し、しみじみ。『佐々木、イン、マイマイン』を経ての変化を問われると、「見える景色は変わったが、ただ面白いことをやりたいだけで、そこは自分自身、変わっていない。めちゃくちゃ高い理想があって、それはそのままに、現実も見えるようになってきている」と語った。 舞台挨拶の途中には、主演を務めた藤原季節がサプライズで登場し、「このふたり(内山監督と細川)が脚本を書くのに、確か何年もかかっているんですよね。内山とは会ったこともなかったんですけど、なぜか僕が主人公に選ばれた。協力者が集まり、実際に撮影が始まって、このこと自体がもう奇跡なわけで、撮影に走り出した時点で、僕たちの運命は反転していたのかなと思う」と『佐々木、イン、マイマイン』への熱い思いを語っていた。 今回のリバイバル上映は、コロナ禍だった2020年の上映時に劇場に来られなかった観客に、改めてスクリーンで“佐々木”と出会う熱を届けるために企画されたもの。この日開催された「TOHOシネマズ・ピックアップ・シネマ Vol.7」を皮切りに、2020年の上映劇場である新宿武蔵野館、渋谷シネクイント、池袋シネマ・ロサへの“凱旋”をはじめ、全国各地での上映も決定している。 「ここに映っているもの、作ったことが間違いではない。当時は勝つことしか考えていなくて、勝ち負けだけが自分のすべてだったが、このメンバーでこの映画を作れたことが、今の自信や、血となり肉になっている。思いがこもった渾身の球を受けていただいたことがめちゃくちゃうれしいです」(細川) そして、10月11日(金) には内山監督が日本、フランス、韓国、香港合作で手がけた最新作『若き見知らぬ者たち』の公開を控えている。主演の磯村勇斗をはじめ、岸井ゆきの、福山翔大、染谷将太、霧島れいか、滝藤賢一、豊原功補ら錚々たるキャスト陣が脇を固める注目作だ。 内山監督は「内容が同じとか、そういうことではなく、僕の中では確実に『佐々木、イン、マイマイン』の魂が受け継がれて、4年ぶりに作れた作品になっている。よろしければ、僕の何かを受け取りに、映画館に来てください」とアピール。また、藤原は「これ、本当に(公開)初週からぶっちぎりで、たくさんの人に観てほしくって。僕も細川もまだ観ずに、必ず初週に行こうと思っている。ここにいる皆さんも、ぜひ初週に『若き見知らぬ者たち』を観に行っていただいて、『佐々木、イン、マイマイン』の魂をリレーして、つなげていただければと思います」と心強いエールを送った。 取材・文・撮影:内田涼