「無花粉スギ」の発見から20年…岸田首相の目標「30年後には半減させる」は実現可能か?
全国では毎年2800万本~3000万本が植え替えられているから、そのだいたい半分が無花粉スギ、小花粉スギということになる。政府は、あと数年で植え替えるスギの70%を無花粉スギ、小花粉スギにするという目標を立てている。これはかなり花粉症対策に期待がもてるのでは。 「いえいえ、スギ人工林の面積が莫大なので、これくらいではまだまだです」 国内のスギ人工林は約440万ha。1haに植栽する本数は、だいたい2500本。それから計算すると、1500万本なんて約0.14%に過ぎない。 無花粉スギの先駆者・富山県では、これまでに220haに無花粉スギを植えたが、富山県のスギ人工林の面積は、約4万8000ha。その割合は0.5%に過ぎないという。 これは、あまりに少なすぎる……。 果たして10年後にスギの人工林を2割減らすことは可能なのだろうか。 「2割減というのは、莫大な数字。いろいろ問題が出てくると思います。まず伐採したあとをそのままにしておくと、土砂崩れが起こりますから、苗を植えなくてはならない。 伐採や苗を植えるための人手をどうやって確保するのか。苗木をどのように確保するのか。それらを全部解決しなくてはいけないから、たいへんだなと思います」 ◆生産者を確保して、2年後以降の目標は年間20万本の無花粉スギ生産 スギが盛んに植林されたのは’50年から’70年の間。戦後の復興期に木材の需要が高まったためだ。しかし、その後海外から安価な木材が輸入され、国産の木材の需要は低下するばかりだ。今、スギを植林する必要があるのだろうか。 「よく広葉樹を植えたほうがいいと言われますが、広葉樹は成長に時間がかかります。ある程度大きくなるまでは下刈りをするなど、手間がかかる。また、広葉樹はまっすぐ育たないので、木材として使いにくい。スギは成長が早く、土砂崩れ防止機能や二酸化炭素の吸収機能が高い。林業を次の世代に引き継ぐためにもスギの植林は必要です」 50~60年前に植林されたスギは、現在大きく成長し、まさに伐採の時期を迎えているとか。 「その時期に合わせたように無花粉スギを挿し木だけで増産することが可能になりました」 富山県では、2年後には20万本を生産することが目標だ。今の課題は、 「苗木の増産に向けた生産者の確保です」 少しでも花粉を少なくするために、ぜひがんばってもらいたい。 取材・文:中川いづみ
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