農繁期渡り歩く若者たち 〝性に合う〟その理由は 和歌山のミカン産地で聞く
6割が県外から
管内求人の応募窓口などを担うJAの担当者は「各地を渡り歩く遠方からの働き手が増えてきた」と話す。23年度の応募者を見ると、主力ミカンの収穫直前に当たる10月時点で約6割が北海道や福岡など県外から。前年の1・5倍に大きく伸びた。コロナ禍などを機に価値観が変化し「都会を離れて農業に触れたい人や、定住を見据えて地域の雰囲気を確認しに来る人が増えた」(同)という。 一方、地域では受け入れ住居などを各農家が用意するのは「負担が大きい」との声もある。JAでは、効果的な支援の検討を進めている。 農水省は、農繁期が異なる産地間での連携を支援する。共同での人材募集や、採用した働き手の旅費・宿泊費などを対象とした補助事業を22年度から始めた。副業が一般的になるなど働き方が多様化する中で、短期の働き方は「これから広がっていくのではないか」(就農・女性課)とみている。
<取材後記>
農業現場で、さまざまな人が働くようになってきた。副業や1日バイトといった働き方の広がりに加え、インターネットサイトやアプリなど、働く機会を探す手段も増えた。アルバイトのマッチングアプリ運営会社によると、同社アプリの農業分野での利用は急増している。就農を目指すのではないが、農業に関わりたい人たちがいる。 取材中、小松さんと三本菅さんの自然体で働く姿が印象的だった。実や枝の位置を見極めるまなざしは真剣そのものだが、持ち場を離れて五百崎さんと3人で集まると、柔らかい笑顔と笑い声が広がる。 2人とも「外の作業が気持ち良い」と話す。そんなふうに農業と若者の接点が増えれば、農業はもっと社会全体に身近な存在になっていくような気がした。(浦木望帆)
日本農業新聞