『真・三國無双 ORIGINS』序盤レビュー。シリーズ史上最多の敵兵士との戦いは、もはや一騎当"万"。戦場の駆け引きや陣営を選ぶ、プレイヤーの“選択”が試される
コーエーテクモゲームスより、2025年1月17日発売予定の『真・三國無双』シリーズ最新作『真・三國無双 ORIGINS』。対応ハードは、プレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、PC(Steam)。 【記事の画像(29枚)を見る】 本作は『真・三國無双』シリーズの原点回帰を掲げ、シリーズの持つ“一騎当千の爽快感”などの魅力はそのままに、より“三国志”のドラマを濃厚に描くなどの、これまでのナンバリングタイトルとは一味違った体験を楽しめる意欲作だ。 本記事ではメディアプレビュー向けのバージョンをお借りして、実際に遊んでみたゲーム序盤のプレイレビューをお届けしよう。 濃密に描かれる三国志の物語 まずは物語の舞台・世界観について。『真・三國無双』シリーズは、“三国志”と“三国志演義”をベースとしたアクションゲームシリーズ。シリーズ作品は、基本的にキャラクター性が独自の解釈で表現され、カラフルかつわかりやすい武将像を描いているのが特徴。 本作は、武将像が全体的にシックな感じに落ち着いていながらも、『無双』らしさは損なわないようなバランス感を実現。もちろんデフォルメは効いているのだが、より現実感の強い武将たちのドラマが描かれていく。 物語も“三国志”がベースだが、これまでは各武将を操作して遊ぶタイトルだったこともあり、語られるストーリーはダイジェスト的。一方で、本作では“黄巾の乱”から“赤壁の戦い”までをテーマに、じっくりとストーリーが描かれていくのが特徴だ。 タイトルによってもまちまちだが、だいたい“なんとなく戦いが起きた経緯”などは多少説明はあっても、あくまでアクションゲームとしての1ステージといった感じで、戦いの経緯・人間関係などは深く描かれることは少なかった。 この人物がどういった背景を持っているのか、なぜこのような戦争が起きたのかなどが深く語られていくのが本作。“三国志”を知らなくても、イチからストーリーラインを追えるようになっている。 物語の主人公となるのは無双武将ではなく、オリジナルキャラクターの名もなき英雄。主人公は記憶を失っており、自分が何者なのかもわからないが。しかし“太平の世を目指す”といった使命だけは記憶の片隅にあり、世のため人のために剣を振るっていく。 主人公。名前は変更可能(デフォルト名は、無名)。 そんな主人公の視点から、数々の武将たちと出会っていき“三国志”のドラマを追っていくのが本作のストーリー。最序盤はある程度決められた道筋でドラマを追っていくが、その中にも多彩な選択がある。そしてのちに自分で劉備陣営、孫堅陣営、曹操陣営の3つの中から、所属する陣営を決めることとなる。 主人公は姿形が決まっていて、自身の物語を持っている。バトル以外では無口系主人公で、自分の選んだ選択肢でのみセリフを発するようなタイプ。 主人公なりの魅力は確かに感じられるのだが、そこまで個性が強いわけではない。だったら「キャラクタークリエイト方式でもよかったのでは?」と感じる部分も。とはいえ、遊んでいくうちに決まった主人公だからこそ、感じられる魅力もあるのではないだろうか。 本作オリジナルキャラクターも、何名か登場する。 これまでとは異なる武将のイメージ 描く時代を絞っているからこそ、武将たちのイメージは全体的に若く、のちに歴史へ名を残す英傑たちの黎明期が描かれている。 たとえば劉備たちは、自身たちの志のもとに集まった義勇軍でしかなく、これから世間に名を売っていく手前の状態。曹操もまだ、出世街道の途中といったところ。劉備や曹操は、立ち振る舞いもかなり若く、これから大物になっていく片鱗は見えつつも、これまでの『真・三國無双』シリーズとは描かれかたが少し異なる。 わかりやすく違う点だと、黄巾党のトップである張角や、悪逆非道で知られる董卓といった、いわゆる悪役ポジションのキャラクターたちは、イメージがガラリと違う。 シリーズの張角はかなり誇張され、張角を熱狂的に信じる党員の集まり、といった感じの描かれかただった。張角自体もややコミカルなことが多く、アクションゲームとしての“1ステージ目のボス”といった印象が強いひとも多いだろう。 本作での張角はよりしっかりとドラマを持っていて、なぜ黄巾党として反乱を起こしたのか、張角が何を目指しているのかなどが、ハッキリと描かれている。張角自体のビジュアルだけでなく性格などもこれまでのものとは異なり、自身の信念を貫く男として描かれている。 ゲームとしてはやはり“三国志”の導入パート、にはなるのだが、張角まわりのエピソードだけでもボリュームが盛りだくさん。黄巾の乱とともに、孫家(孫堅や孫策)、劉備、曹操といった3つの陣営がどのように成り立っていくのか、そしてその周囲の人間関係が濃密に描かれる。 そして董卓も、黄巾の乱に関係する周囲のひとり。董卓の言動や考えかたは、やはり悪逆非道であることは変わりないのだが、シリーズ作品で誇張された"醜さ"ではなくひとりの武将として真摯に描かれている印象。その考えかたもある意味では正解とも言え、董卓ならではの芯があり、こちらも決して“単なる悪役”みたいな描きかたはされていない。 それらを主人公の視点から追っていくのがおもしろく、かつヒーロー的な物語が語られていく。主人公は記憶を失っているものの、武術に長け、そして戦場を支える特別な力を持っている。最初は劉備たちの義勇軍のひとりとして剣を振るうのだが、自身の活躍により各陣営に名を馳せていき、あらゆる人物たちから一目置かれる立場になっていく。 この手の活躍をする作品だと“歴史の裏で、じつは活躍していた名もなき英雄”のような描きかたをすることも多いが、本作の主人公はそうではなく、活躍しているうちに“戦場を知るものならば、噂を聞いたことがある”くらいの立場へとどんどん昇格していくのが心地いい。陣営に属し、活躍していくとどうなるのか、製品版の物語がより気になった。 圧倒的なバトルの爽快感 バトルはやはり力が入っているようで、『真・三國無双』シリーズの一騎当千の爽快感を重視したアクションが楽しめた。本作はシリーズ最高レベルの敵兵士表示数を誇っており、超大量の兵士たちと対峙し、戦いをくり広げる。 つねに大量の兵士と戦うのかというとそうではなく、ステージの要所要所でのみ、敵兵士たちが集結した“大軍団”と対峙することになる。その道中までは、いままでのシリーズ作品クラスの敵兵数と戦い、特定の場面では超大量の兵士が登場するようなイメージ(それでも、通常時ですら敵の数はものすごく多い)。 ただ敵が大量に出るだけでなく、攻撃頻度なども高めで、ひとりで突っ込めばピンチに陥ってしまうようなシステムにもなっているので、“敵兵士が大量に立っているだけ”みたいな印象はナシ。しっかりと大量にいるからこそ、プレイヤーの行く手を阻むような作りになっている。 とはいえ『無双』シリーズらしく、うまく操作すれば大軍団だろうと自分の手で蹴散らせるのがいい塩梅。若干複雑な操作になっているものの、慣れれば簡単に多彩なアクションをくり出せる。 いろいろとシステムはあるものの、シンプルに通常攻撃と強攻撃を組み合わせた攻撃だけでも、それなりに攻略はしやすい。“これができないと攻略できない”みたいなアクションの作りにはなっていないのでご安心を(大ボス戦など、一部例外除く)。また、難易度選択もあり、低難度にすればシステムの一部が簡単になる要素もある。 敵武将は“外功”と呼ばれるアーマー的なものが付与されており、攻撃を与えたりすると外功が消え、大ダメージを与えられる大チャンスが生まれる。ただやみくもに攻撃しているだけではなかなかに外功を削ることはできず、多彩なアクションを駆使して攻略していくのが基本となる。 武将との攻防は一見複雑ではあるのだが、ようは外功を削っていけばいいだけなので、慣れていくと考えかたはシンプル。そこに相手のガード不能技へのカウンター“発勁”であったり、ジャスト回避などを絡めると有利に立ち回れる程度に抑えられている。 簡単にしすぎると「ただ敵をなぎ倒しているだけ」になってしまうし、難しくすると「“無双”できない」となりがち。『無双』シリーズが抱えるアクションのジレンマを、本作はうまくバランスを取って解消していると感じた とくに、いわゆるジャストガードである“弾き返し”はとてもいい。相手の攻撃がくるタイミングでガードをすれば弾き返しとなり、相手を怯ませながらカウンターを叩き込める。成功猶予時間はそこそこ緩く、完全にジャストでなくてもいいほか、攻撃モーション中だろうと成功すれば弾き返しができる。“攻め手を緩めず、防御もできる”のが、“無双”アクションとして、とてもいいシステムだと感じた。 ステージの高い戦術性 ステージの戦術性も、シリーズタイトルによってもまちまちではあるが、基本的には手前から順番に敵武将を倒していき、最後の総大将を倒せばクリアー、といった基本指針がある。ナンバリング後半になればなるほど、その色は強くなっていったように思う。 本作でもそれは同じだが、ステージごとに取れる戦術がかなり異なり、その戦術に合わせて専用のイベントが多数用意されていたりするため、ステージ攻略の幅がものすごく広い。このあたりが、シリーズが当初から掲げていた“タクティカルアクション”の部分であり、単なる一騎当千のアクションゲームではない部分に原点回帰している。 たとえばとあるステージでは、ステージ内で、孫堅、曹操、劉備の3つの陣営、いずれかの作戦に乗って攻略していくような場面がある。どの選択を取っても最終局面では決戦にはなるのだが、助力した陣営によって戦局の描きかたが変わったり、はたまたほかの陣営では体験できない作戦シーンなども展開したり(ちなみに、3陣営以外の陣営への助力なども可能)。 黄巾党との戦いでは、ほかの陣営ではなく、劉備陣営に助力した結果、ステージ後方から奇襲を仕掛けることが可能になるなど、ステージ内での選択も幅広い。 こういった仕掛けが多数用意されており、1ステージを数回あえてリプレイしても「え、そんな展開あるの!?」と、細かなイベントが用意されていて驚いた。このあたりは、『真・三國無双』シリーズの初期によくあった要素なので、なつかしさもありつつ、その作り込みの幅に驚いた。 また、こういったイベントや作戦を無視して、ひとりで単独で突っ込んで攻略してもいい。本作には“士気”などのシステムがあり、単独で突撃すると超不利な状態で戦うことになるので難度がグンと跳ね上がるのだが、それでもうまくプレイすればひとりで大軍団を倒すことも可能だ。 ちなみに指示などを無視した活躍もできるが、そうすると多数用意されたイベントを見ることなく終わってしまうかもしれない。それはそれである意味痛快ではあるが、ステージごとの個性を楽しみたい人は、何かしらの方針に従ったほうがよさそうだと感じた。 また、チャレンジしたい人は自分だけで活躍してもいいが、味方陣営はゲームの都合でかなり弱く、放置しているとすぐ敗北してしまうことも。一方で、味方を助けたり活躍を重ね、味方の士気を大きく上げると、自分がなにもせずとも戦場全体を攻略してくれるほどに強力になったりもする。そのため、本作は“士気”がかなり重要だ。 戦場の自由度の幅と、イベントの豊富さ、そして大量の兵士。要素のミックスがものすごくうまくまとまっていて、ひとつのアクションゲームとして見るだけでもとても好印象。アクション自体は慣れていくとやることが絞られていくので、次第に単調にはなっていくものの、そこをRPG部分の幅で補っているように感じた。 ちなみに大ボス戦のみ、“死にゲー”とまではいかないが、高い難度を誇る。ボス専用のアクションを多数持っており、骨太な難敵を倒すパートとなっている。『無双』シリーズは、この手の大ボス戦だと、はっきり言って単調なことがかなり多かった(根本が“無双”できるアクションを重視しているからだろう)。 本作はそもそも武将戦が細かい攻防を楽しめる作りになっているので、やはり大味な部分は少しだけあるのだが、ボス戦としてもしっかりと成り立っていると思う。 アクションRPGらしさの満点 本作はアクション“RPG”としての色も強く、“大陸地図”と呼ばれるフィールド画面で拠点を移動したり、戦場を選択してゲームを進めていく。ストーリーに関わるのが、合戦をくり広げる“戦場”で、おもに育成のために攻略する小~中規模にランダム発生するミニステージもある。 装備品がいくつか存在し、ステージ攻略などで得たアイテムを装備して主人公を強化していく。武器種は多彩で、武器はバトル中いつでも装備変更が可能。ふと剣ではなく、槍で戦いたくなっても、すぐ変更できるのがなかなかにリッチな仕様だ。 武器は使い込むと“習熟度”がアップしていき、攻撃回数が増えるなどの恩恵がある。習熟度がアップすると主人公のレベルである“境地”が上昇し、基礎ステータスなどがアップ。本作はバトルで得た経験値でレベルアップするのではなく、各武器の経験値で上がった、武器ごとのレベル=主人公のレベルとなる。 そのため、本作は複数の武器を使用したほうが主人公のレベルが上がりやすく、かつサブクエスト(お題を武将などから課される)などでも複数武器の使用を推奨する作りになっている。と言いつつ、武器の習熟度自体は使い込まなくてもバトルの結果で多少得られるので、自分の好きな武器だけを使い込むのも悪くはないだろう。 また、戦場での活躍などに応じて、スキルポイントをゲットできる。スキルを得ると新アクションや新パッシブスキル、基礎ステータスアップなどの恩恵がある。スキルはツリー式で、境地レベルに応じて新ツリーが解放されていく。 さまざまな要素が成長要素につながっていて、主人公の育成を楽しみながらステージを攻略できるのがおもしろいところ。こちらも一見複雑なのだが、突き詰めると“好きな武器を使って活躍する”だけ。 武将との交流を手助けする、水鏡先生なども登場する。 バトルも育成も要素はたくさんあるのだが、結果的に見ると『無双』シリーズらしい、とっつきやすいシンプル度にあえて落ち着かせているのだと感じられた。 今後が気になるストーリー! 今回のプレビューでの全体としては、『真・三國無双』シリーズとして、アクションや戦場の体験、細かな育成部分自体は正統な進化を遂げているように感じた。『無双』シリーズらしくも、アクションゲームとして見つめ直したであろう、爽快感と戦術性の両立をうまいことまとめているように思う。 主人公は立場としても自由だが、「自分の選択で自由に動いてほしい」と、その能力や特性から遊撃隊としての立ち回りを求められることもある。物語としてもバトルとしても“選択”を楽しめるのが、本作のテーマになっているようにも感じた。 やはりシリーズファンも気になるのは武将たちが、特定条件でのみ発動できる、相棒である“随行武将”としてしか使えない点だろう。しかも、各陣営3人が随行武将対象で、計9人のみ。もちろん、自分の好きな武将を使って攻略したい気持ちはすごくわかる。 ただ今回のプレビュー版を通して、個人的には「これはこれでアリだな」と思った。というのも、物語の中で主人公は各武将たちと絆を深め、お互い手助けし合っていく。自由な身である主人公だからこそ見せる一面も多数あり、本作の目指す方向性が末端ながらに感じられた。 まだまだ陣営それぞれに属してからのシーンなど、序盤のプレイではわからない部分もあるが、武将たちとの交流や本作独自のシーンは、大筋の物語と相まってとても楽しい。これが武将たちの視点からだった場合、いつも通りの関係性で、もう見たことがあるような“三国志”のドラマを見るだけだっただろう。 プレイアブルではないものの、物語を盛り上げる武将たちは多数登場し、こちらもそれぞれ交流も楽しめる。オリジナル主人公だからこその魅力をぜひとも味わってみてほしい。 なお、本日(2024年11月22日)より体験版の配信がスタート。おもにアクション部分を体験できるようになっているので、まずは“圧倒的臨場感”で描かれる戦場を体験し、本作の爽快感を堪能してみてはいかがだろうか。