『光る君へ』吉高由里子が向き合い続けてきた“書” 『源氏物語』誕生への思いも明かす
「『光る君へ』が終わった時に何を思うんだろうな」
――まひろにとって、ききょう(ファーストサマーウイカ)はどんな存在だと思いますか? 吉高:話が合う友達ですかね。まひろは場に合わせて自分の話す速度やレベルを変えて倫子(黒木華)たちと遊んでいたと思うんです。そういった女の子の友達が今まではいなかったですし、華やかな学びの場に憧れて飛び込んでいったはいいけど、会話のレベルが違った。みんなに合わせた偽物の自分がいたと思うんです。ききょうとは腹の内を見せあう関係性が気持ちいいし、嬉しいというか。偏差値の高い会話ができて、まひろにとってはドキドキワクワクする友達だったんだと思います。……でも、今はこう言っているけど、これからききょうが掻き回して帰っていくシーンがあるんですよね。その後だと、「なんてやつだ!」というふうにまたききょうの印象は変わってしまうかもしれません。でもそういった何にも囚われずに自分を貫ける芯の強さに、まひろは憧れているのではないですかね。 ――まひろと道長はソウルメイトと表されますが、吉高さんはソウルメイトとはどんな関係性だと思いますか? 吉高:道長とまひろはもう恋愛を超えている次元なので、戦友でもないですし、拠り所なんですかね。お互いが光と影の存在で、まひろが影の時は道長が光っていて、まひろが光る時は道長が影で支えてくれているという関係なんだと思いました。 ――まひろと道長の関係性で変わったことと変わらないことは、それぞれどんなことだと思いますか? 吉高:変わったことは立ち位置や環境がそうです。一緒にいられる空間になり、近いのに遠い関係性になってしまった。一生結ばれないのだろうけど。まだ藤壺に出仕する前の、まひろと三郎の時の方が、遠い身分だけど近かったような気がします。それは心の距離でもあるのかなと思ったり。惹かれあっているのは、ずっと変わらないのだと思うんです。道長のことをずっと思っていて、その気持ちが爆発してしまわないように自ら蓋をして、自分から一生懸命に距離を取っている。一緒に同じ方向を目指している者としては心強くて。まひろは道長の存在が生き甲斐なんだと思いますけどね。どうなりたいとかではなくて、道長がこの世にいる理由という感じがします。 ――第32回で、まひろは帝に献上するための『源氏物語』を自分のために書くというふうに気持ちが変わっていきます。 吉高:帝に献上するために書いた物語が偽物っぽく、自分の中での違和感に感じてしまったんだと思います。途中で書き方とか向き合い方を変えていったら、もう帝のための物語でもなくなってしまい、自分が面白い物語を書きたいと思ったんでしょうね。一度夢中になると、まひろは猪突猛進な性格なので、物語のアイデアが頭の中で走っていったんだと思います。 ――まひろが紫式部として『源氏物語』を書き始めるシーンがいよいよ描かれていきます。 吉高:帝に献上する一冊の本ができるまでの過程を丁寧に時間をかけて撮りました。第31回で出てくる『源氏物語』を思いついた時の描写が好きで、カラフルな和紙や絵巻物がパラパラと落ちてくるシーンは私も楽しみにしています。第2章の始まりですよね。これまでのまひろの自宅の外での経験が『源氏物語』に繋がっていくという、それまでは前書きだったとも思えます。『源氏物語』の分かりやすいエピソードをこれまでにちりばめていて、『源氏物語』を読んだことのない人も一緒に楽しめるような、ここまで蒔いてきた種が一つひとつ花を咲かせていく物語になっていきます。大石(静)さんが生みの苦しみを乗り越えてここまで頑張ってきたと言っていたから。私もこれで前半が終わるんだという気持ちにはなりましたね。こんなに長い作品は初めてで、自分は『光る君へ』が終わった時に何を思うんだろうなとか、そういった気持ちが込み上げてきたりしていますね。
渡辺彰浩