作風盗まれる? AIが出す指示の中に“自分の名前”が…アメリカで集団訴訟
日テレNEWS
キーワードを入力するだけで自動で画像を作り出す「生成AI画像」が広がりを見せています。一方で、こうしたAIが作り出した画像に著作権を侵害されたとして、アメリカではアーティストによる集団訴訟に発展しています。 ◇ 企業のCMなどを手掛ける、アメリカ・ロサンゼルスの映像ディレクター、ルパート・クレスウェルさんは、今年から画像生成AIを使い始めたといいます。 映像ディレクター ルパート・クレスウェルさん 「『テーブルの上に置かれたリンゴの写真』と入力すると…」 与えられた指示にAIが自動で画像を作っていきます。そして、4パターンのリンゴの画像ができました。リンゴを赤から青に変えたり、「一口かじられた」など指示を加えていくこともできます。 美容室をテーマにしたアート画像では、知人男性の写真を基に、場所や構図、光のあて方などAIに1万以上の指示を加えて作りました。 ルパートさんは、こうして制作した画像をまとめ、アート本にできないかと考えています。 ◇ 一方で、「AIが自分の作風を盗んでいる」と訴えるアーティストも出てきています。 人気映画のキャラクターデザインなどを手掛ける画家のカーラ・オルティスさんです。 画家 カーラ・オルティスさん 「私の同意、クレジット表記、補償も何もないなか、AIによって作られました。本当に憤りを感じます」 カーラさんは「AIが自分の絵を承諾も得ず、まねている」と訴えています。 画家 カーラ・オルティスさん 「AIに作品をまねされました。この目の描き方、私の過去の作品を見るようで気味が悪いわ」 カーラさんは、AIが作った作品は目や鼻のほか、陰影の描き方などに自分の作風を感じるといいます。 実はAIに出された指示の中にカーラさんの名前が使われているのです。他にも、カーラさんが描いた油絵と、AIが作った油絵を見比べてみると、鳥の種類、女性の肌の色や表情などが若干異なっていますが、構図はほぼ同じです。 画家 カーラ・オルティスさん 「何十年もかけた努力、長年のトレーニング、そのすべてが搾取され、悪用されたのです」 カーラさんは、仲間のアーティストとともに「著作権の侵害」だとして、画像生成AIとそれを開発する会社などに対し、集団訴訟を起こしました。 開発会社の一つである「スタビリティーAI」はNNNの取材に対し、「係争中のことでコメントしない」としています。 ただ、アーティストの間でも著作権への捉え方は様々です。 映像ディレクター ルパート・クレスウェルさん 「AIの学習は芸術家が学ぶ方法と同じです。私が美大生だった頃、美術史を学び、影響を受けたものを調べていたのだから」 AIに学習させるための画像や情報は非営利団体が収集したもので、フェアユース(公正な使用)とみなされるのではという考え方です。 ただ専門家は、著作権にからむ問題が広がる前にルール作りが必要だと訴えています。 画像生成AIに詳しい サンノゼ州立大学 アフマド・バナファ教授 「私たちはガイドラインを持たなければならない。倫理観が必要だ。まず第一に著作権や誤報が許されないことを確認するためのルールや規制が必要だ」