『ブギウギ』水上恒司演じる愛助の猛烈アプローチはあり? スズ子の思いも近づきはじめる
『ブギウギ』(NHK総合)第53話では、スズ子(趣里)が神戸公演の帰りにはな湯と梅丸少女歌劇団(USK)を久しぶりに訪れる。はな湯に集う人々との再会、リリー(清水くるみ)、和希(片山友希)、秋山(伊原六花)、そして林(橋本じゅん)との再会は和気あいあいとしている。「このご時世、苦しいんは苦しいでっけど、まだまだ続けていきまっせ」とゴンベエ(宇野祥平)が言っていたように、はな湯もUSKも前を向いていた。 【写真】水上恒司インタビュー撮り下ろしカット そして東京に戻ったスズ子は、愛助(水上恒司)からたくさんの手紙が届いていることを知る。 「オレの勘だとあの学生、スズ子さんに気ぃあんな」と口にする小夜(富田望生)は、異様なほど愛助への警戒心をむき出しにする。一方で、スズ子に忌避的な様子は一切なく、むしろ好感を抱いているように見える。劇中、スズ子は「相手は学生さんやで。こっちは、ええ年のおばちゃんやんか」「向こうはワテより十も下や。色恋の相手になりますかいな」と何度も自身と愛助との間に線を引いているが、愛助を見て、戦死した弟・六郎(黒崎煌代)の姿を重ねていたスズ子にとって、まだはっきりとした恋心ではなくとも、どこか気になる相手であることには違いない。手紙を読むスズ子のやわらかな表情が心に残る。 地方巡業を重ね、疲れていたスズ子が見た夢が、彼女の複雑な心境を物語っていて面白い。学生服を着た人がカメを大切そうに持っている。その優しい手に、スズ子は思わず「六郎……?」と声をかけるが、その人は愛助だった。「カメをプレゼントさせてください」と申し出る愛助に、スズ子は「あかん、あきまへんて! カメがなんぼ長生きいうても、ワテより十も下や」「あかん。あかん!」と繰り返す。支離滅裂な台詞はおかしみを感じさせつつも、なぜ愛助が気になってしまうのか、六郎の姿が重なる愛助への好意が何なのか、スズ子にもよくわかっておらず、困惑している様が伝わってくる。懸命に思いを振り切るような姿が印象深い。 とはいえ、愛助が東京の下宿先にまでやって来たことには驚きだ。懸命にスズ子を誘う愛助と、戸惑いながらも愛助の申し出に耳を傾けるスズ子、そして愛助に睨みを利かせ続ける小夜の構図がコミカルだ。スズ子は一度、申し出を断るが、チズ(ふせえり)の「手紙くれた子でしょ? 友達になりたいんじゃないの?」という言葉が決意を固めさせた。スズ子は「小夜ちゃんも一緒に行ってええんやったら」と申し出を受け入れた。愛助は途端に顔がほころぶ。 愛助の手紙や手紙に綴られた彼の行動は、はたから見るとファン以上の好意にも映る。しかし彼のスズ子への思いが、ことのほかまっすぐなだけともいえる。汽車の中で「故郷」を歌うスズ子を天使に例え、熱いまなざしを向ける愛助の表情からも、彼の純粋性が感じとれる。何より、スズ子が申し出を受け入れた時に見せた、心の底から喜んでいるような面持ちは魅力的だった。 スズ子を待つ愛助は目を輝かせ、出かける支度をするスズ子の足取りは軽い。2人の距離は近づき始めた。
片山香帆