3000万円超の新型ポルシェ タイカンが痛快過ぎた! 0-100km/h 2.2秒の過激なドイツ製スポーツカーに迫る
極めて痛快
最初のメニューはタイカン・ターボでセヴィリア市内からモンテブロンコ・サーキットまでの一般道を走行するというもの。ここではタイカンの優れた快適性を再確認することになった。 実はタイカン、3年ほど前に年次改良が実施されており、そこで足まわりの考え方が根本的に変わったと私は捉えている。具体的には、サスペンションの動き出しをよりスムーズにすることで路面からの衝撃を効果的に吸収するとともに、コーナリング時の適切な姿勢変化を生み出すというもの。おかげで足まわりが突っ張ったような印象が消え、よりしなやかな乗り心地に生まれ変わったのだ。 率直にいえば新型もこれとおなじ方向性で、デビュー当初に比べると、快適性が向上したと同時にコーナーリング時の安心感が強まった。さらに新型では、「ポルシェ・アクティブ・ライド」という名のアクティブサスペンションをオプション設定し、ロールやピッチを抑えるなどの機能を実現している。 ただし、私は自然なピッチやロールが起きることはむしろ好ましいと考えるタイプなので、一般的な公道を走る範囲でいえば、アクティブ・ライドを持たない旧型の足まわりでも十分に満足できるであろうことをお伝えしておきたい。 いっぽう、ヴァイザッハ・パッケージで挑んだサーキット走行は極めて痛快だった。 とりわけ、ロールやピッチの起こり方が自然で、荷重移動を駆使しながら走れる点は実に心強く、タイヤのグリップを限界まで使いながらコーナーを攻めることができた。しかも、いかにもポルシェらしく、ABSやスタビリティ・コントロールの介入が絶妙で、タイヤが滑り始める入り口のあたりまでドライバーのコントロールを許容してくれるうえ、介入の仕方も滑らかなので、システムをオンにしたままでも十分にサーキット走行の醍醐味を味わえるはず。この辺は、長年スポーツカーを作り続けてきたポルシェだからこそ実現できたものだろう。 たしかに新型は「Higher, faster, further」を体現している。ただし、充電スピードに関していえば、前述のとおり、いまの日本ではそのメリットを実感しにくいだろう。したがって決定的な違いは航続距離が伸びたことと、ターボGTが追加されたことの2点にあるように思う。 つまり、新型の国内デリバリー開始を待つか、それとも現行型を選ぶかは、航続距離をどれだけ重視するかにかかっているといっても過言ではない。
文・大谷達也 編集・稲垣邦康(GQ)