初の南海トラフ臨時情報「巨大地震注意」も 専門家「海のレジャーを全面禁止にはできない」「備えと、情報が得られない時の“想像力”が大事だ」
■南海トラフは「必ずくる。しかし、いつかは我々専門家にもわからない」
南海トラフは100年から200年のペースで繰り返し地震が発生し、想定震源域は西側と東側に分けられている。長尾氏は「安政東海地震と安政南海地震は32時間後に起きた。昭和東南地震と昭和南海地震は2年空いているが、地震学ではほぼ同時と言っていい。300年前の宝永地震はいっぺんに破壊したと考えられている。歴史的には東側から割れることが多いが、コンピューターシミュレーションの進歩や古文書の詳細な解析を行うと、西から割れた時に九州の沖合が引き金となることもあるようだとわかってきた。そのため震源域が広がり、宮崎県の沖合も想定震源域に入った」と話す。 南海トラフ巨大地震の被害想定は、東日本大震災よりも大きい。死者数は、東日本大震災の1万9775人(今年3月8日時点)に対し、32万3000人、被害総額は約16兆9000億円に対し、220兆3000億円となっている。
背景にあるのが津波の到達時間で、静岡の焼津市や和歌山の太地町・串本町、高知の室戸市などは、高さ3mの津波が3分で到達すると予測されている。長尾氏は「一番の違いは地震と陸地までの距離。東日本の時は最低でも20~25分あったが、南海トラフは揺れている間に津波が来る。死者数もその点が非常に大きな要因となっている」と説明。 さらに、「南海トラフ巨大地震は必ずやってくる。2030年代は可能性が高くなり、2040年、2050年ぐらいまでにはほぼ確実に発生するだろうと言われている」とし、「ロシアンルーレットのように、弾がどこかの断層に入っている。引き金を引いて今回は出なかったかもしれないが、次か、次の次かもしれない。よく『南海トラフ巨大地震はきますか?』『これだけこないなら大丈夫ではないか?』と質問されるが、我々ですら“必ずくる。しかし、いつかわからない”という状況だ」と明かした。
■“地震への備え”は…「想像力を持って」
政府や気象庁は、「地震への備え」を再確認することを呼びかけている。具体的には、家族との連絡手段や集合場所、非常時に持ち出すものの用意などだ。 その中でも水の問題について、長尾氏は「お風呂の水を流さないというのは良い対策。150~200リットルあるが、これをペットボトルでは備蓄できないので、お風呂の水は次入る前に流す。また、災害用やキャンプ用に泥水などを飲めるストローもあるので、そういうものも買っておく。上水道は比較的早く直るし、給水車も来るが、下水が動かなければトイレも流せない。上下水道はペアで直す必要があることを考えておいていただきたい」と促す。