実は恐ろしい「日経平均7万円シナリオ」【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフグローバルストラテジスト】
※本稿は、チーフグローバルストラテジスト・白木久史氏(三井住友DSアセットマネジメント株式会社)による寄稿です。
------------------------------------- 【目次】 1. 「デフレ脱却」で始まる日本株の長期上昇相場 2. 「ROEの改善」のインパクト 3. 実は恐ろしい「日経平均7万円シナリオ」 ------------------------------------- 2023年の日本株は、さえない前評判を覆して好調に推移しました。日経平均株価(日経平均)は年始の終値25,716円86銭から11月ザラ場高値の33,853円46銭まで約3割上昇しましたが、こうした値動きに思わず「利益確定の売り」を出した方も少なくないでしょう。しかし、2023年の日本株の好調が長期の上昇相場の始まりに過ぎないとしたら、「早すぎる利食い」はその後の運用に影を落とすことになりかねません。そこで今回は「日経平均7万円シナリオ」と題して、長期的な視点から今後の日本株の動向を展望してみたいと思います。 (※本レポートは複数の前提条件を基に試算したものであり、前提条件が異なることでシナリオと実際の値動きには大きな乖離が生じる場合があります。)
1. 「デフレ脱却」で始まる日本株の長期上昇相場
■物価上昇と賃上げの好循環によるデフレ脱却への期待感が高まっています。こうした経済環境の変化から市場の関心を集めているのが、名目国内総生産(GDP)の推移です。GDPは国内経済の規模をあらわす経済指標ですが、私たちがよくニュースで耳にするのはインフレの影響を取り除いた「実質GDP」の数字です。一方、この「名目GDP」は、こうした調整を行わない素の数値の経済指標になります。 ■名目GDPが注目を集めるのは、その拡大が企業の売上や利益と密接な関係にあるからです。例えば、2022年度の日本の税収は国・地方の合計で約71.1兆円に達し、コロナ禍前の2019年度の約58.4兆円から約2割も増加しました。これは、名目GDPの成長が、課税対象となる企業の売上や利益を大きく押し上げたためだとされています。そして、過去のデータを振り返っても、名目GDPと企業の一株当たり利益(EPS)は連動する傾向があることが確認できます(図表1)。 ■弊社では、日本の名目GDPは底堅い実質GDPの成長とマイルドなインフレが続くことで、2023年度は+5.5%、2024年度は+2.6%の成長が続くものと予想しています。そして、デフレ脱却により日本の名目GDPが今後も長期にわたり年率+2.25%の成長を続けると仮定すると、EPSは同約9.1%増加する計算になります(図表2)。 <シナリオA:「デフレ脱却」で9年後に日経平均7万円を達成> ■株価はEPSと株価収益率(PER)の掛け算ですから、仮にPERが一定でもEPSの増加に合わせて上昇することになります。日経平均33,000円を起点に考えると、今後長期的に年率9.1%のペースで増益が続くなら、9年後の2033年には日経平均は72,266円(33,000×1.091^9)となり、7万円に到達する計算になります。 ■「本当にそんなに上がるの?」と疑問に感じる方も少なくないでしょう。しかし、思い出していただきたいのは、2009年12月末以降、日経平均はデフレ経済に苦しみながらも14年間で約2.5倍に上昇してきたという事実です。この間、米国ではS&P500種指数は約4倍に、ナスダック総合指数は同約7倍に上昇しています。もちろん、昨今の米国株のような上昇を日本株に期待するのは欲張りすぎかもしれませんが、「デフレ脱却」という構造変化が本物であれば、企業業績の改善から9年後に日経平均が2倍以上になっても決しておかしくないでしょう。
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