合計特殊出生率「1.20」の衝撃 人口減少で国が滅びる前に「移民受け入れ」を決断せよ 古賀茂明
■子供を持つべきという男女が大幅に減少 実質賃金が下がり続けていてはとても子どもを持とうという気持ちになれないだろうし、働き方改革や女性活躍の環境整備も中途半端なままだ。学校教育の費用や過剰な受験戦争も重い負担となっている。さらに社会保障を含めた将来不安、戦争準備が進み徴兵制が導入されるのではないかという不安など、障害を挙げれば限りがない。 そうした負担や不安を取り除いたとしても、そもそも結婚したくないとか子供を持ちたいとは思わないという人も増えている。 21年の出生動向基本調査によると「いずれ結婚するつもり」と答えた未婚者の割合は15年調査と比べ男女ともに5ポイントほど減少した。「結婚したら子どもを持つべき」と答えた人も男性で20.4ポイント、女性では30.8ポイントも減っている。 古くからあった、「人は、いつかは結婚し、子どもを産み育てるものだ」という固定観念は崩壊していると見るべきだろう。 もちろん、結婚したい、子どもが欲しいという人たちのためにその障害を取り除き、支援策を講じることは必要だが、それだけでは、出生率を大きく上げるところまでは行かないのが現実なのだ。 子どもを産み育てるかどうかは、もちろん、個人の選択の問題である。したがって、政策的に子どもを産み育てる障害を全て取り払っても子どもが減り続けるのであれば、それは個人の自由な選択の結果だから、決して悪いことではないと考えて受け入れるべきなのかもしれない。 その場合は、人口減少を前提とした社会の維持を考えるということになるが、これは極めて難しい課題だ。というのは、例えば介護一つだけを取ってみても、目の前で団塊の世代が後期高齢者になっていき、大量の介護難民の発生、老老介護、介護離職、さらにはヤングケアラーなどの問題が深刻化して、経済社会が回らなくなるのではと危惧されている。
■人口減少、少子化…でも移民は反対の矛盾 そこで、強力な政策的誘導策で、「子どもを産まなければ損」というような状況を作り出すのかどうか、真剣に考えることが必要になる(もちろん、その社会的効果が出るのは20年先ということにはなるが)。 子どもを1人産んだら1000万円給付、2人目は2000万円給付などということができれば効果はあるのではとも思うが、そのための費用は年間7兆円以上になり、財源(最終的には増税)確保に合意を得るのは容易ではない。 結局のところ、今から、少子化が止まらないという前提で社会の仕組みを作り変えていくしかないのだ。 その際、最も重要なテーマは、移民の受け入れの拡大と移民人口増大を前提にした新しい社会の構築である。 自民党の保守派の議員たちは、移民受け入れを正面から認めることに反対している。あくまでも、人手不足対策としての「労働力」導入対策として外国人を見ているのだ。 しかし、そのような狭量な了見のままでは、今日のように外国人の人権侵害が横行して世界から批判される状況は改善できないし、経済停滞の中での円安進行もあって、外国人に選ばれない国となり、移民を大量に導入することにしても必要な数だけ移民が入ってこないということになってしまうだろう。 私がかつてインタビューした著名な投資家、ジム・ロジャーズ氏はこう述べている。 「子を生まず、移民を受け入れることも嫌なのであれば、生活水準の低下を受け入れるしかない」 「ところが、……日本人は、現状を維持したいと思っている。……そのためにお金を借りて生活水準を維持しているのが日本の現在の姿だ」(以上、『日本への警告』講談社+α新書) 「このままいけば日本は50年後か100年後にはなくなってしまうかもしれない。日本人はいなくなり、日本語は話す人がいなくて滅んでしまっているかもしれない」「日本が豊かになるには移民を受け入れるほかない」(以上、『ジム・ロジャーズ お金の新常識』朝日新聞出版) また、フランスの賢人で歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏も、 「人口問題は、数十年の潜伏期を経て一気に発現してきます」 「人口減少は日本にとって最大にして唯一の課題です」と警鐘を鳴らしている。そして、「移民受け入れ」と「少子化対策」は二者択一の問題ではなく、双方を同時に進めるべきだと断言している。(以上、『老人支配国家 日本の危機』文春新書) いずれも、日本にとって非常に参考になる言葉だ。