【オーストラリア】コロナ厳格措置正当性なし、市民の信頼失う
オーストラリア連邦政府による新型コロナウイルス対応策の評価報告書が発表され、州ごとの厳しいロックダウン(都市封鎖)や国境閉鎖、学校閉鎖、ワクチン義務化は、流行初期の段階を除き正当化されないと結論付けられた。こうした措置が一般市民の政府への信頼を大きく損ない、子供にとって精神衛生上の負担になったと指摘している。 報告書は、当時の保守連合(自由党・国民党)政権の初期の厳格な措置がなければ、コロナ禍の死者数は数倍に達していたと評価。ただ、その後の対応策が人権への影響を十分に考慮せずに導入されたことを問題視し、「必要以上に厳しく管理的なものになり、適切さを欠いた」とした。 ビクトリア州やクイーンズランド州、西オーストラリア州が独断で厳しい州境閉鎖を行ったことについては、「一貫性や思いやりを欠いた対応」と批判し、州ごとに異なる方針が信頼低下の要因になったとした。行動制限は次回から「最終手段」とするべきで、市民は短期間で簡単な制限であれば受け入れる姿勢を示すものの、長期の制限には従わない可能性が高いとの見解を示した。 また、ロックダウンによる生活習慣の乱れが、子供や若者の脳に生物学的変化を引き起こした可能性があると指摘。学校閉鎖や遠隔授業は、子供の交流サイト(SNS)の利用を促すことになったと分析した。 アルバニージー労働党政権は報告書を受け、今後の危機に備えるために国家疾病管理センターを設立する方針を発表。2億5,170万豪ドル(約252億円)を投資して2026年1月の稼働を目指す。 ■「世界的に先進的な対応」 野党自由党のダットン党首は、報告書は「政治的色合いを帯びた攻撃だ」と批判。コロナ下で財務相を務めたフライデンバーグ氏は、オーストラリアの対応が世界的に見ても先進的であり、失業者数を大幅に減少させ、経済回復が他国より早かったことを強調し、対応を自賛した。