蝶野正洋60歳 プロレスラーとしての現在地 街では「“蝶野さん!”から“蝶野さんですか?”に」
■盟友・武藤敬司の自己プロデュース力
――今回の本の中で蝶野さんが、自己プロデュースがうまい人物として武藤敬司さんの名前を上げていましたが、武藤さんのすごさはどのようなところにあると考えていますか? みんな一緒だと思いますけど、やっぱりどうしても周りの目を気にする。で、そこが一番大きなプレッシャーにもなるんですけど、そこを気にせず、ある意味無視してとにかく一歩前に出る。リスクはありますよね。だから武藤さんなんかも一歩前に出てることによって、悪口も言われる。プロの興行の世界ですから、客入りが悪かったら「お前が前にでてるから客入んねえだよ」って陰口もたたかれる。 人の評価って、いい評価も悪い評価もあまり気にしていても、自分のやりたいことができない。だからそういう所をある程度早くから武藤さんはシャットダウンしてるというかね。かといって周りの声を全く気にしない人間なのかっていったら、それは俺は逆だと思う。周りは「あいつ聞く耳持たねえな」っていう評価なんだけど、逆で、俺から見ると武藤敬司っていうのはその細かいのも全部聞いて入ってきちゃう。入ってきているところで遮断してる。それを消化しない。まあそういうタイプでしょうね。
■“プロレスラー”蝶野正洋の現在地
――“プロレスラー蝶野正洋”の現在地についてはどうお考えですか? 10年前に終わってますよね。今年、俺も還暦になるんで、還暦のパーティーの準備なんかもしてて、もう10年前で終わってますよね、プロレスの俺は。今年偶然リングに上がるきっかけがありましたけど、俺の中では40代で終わってるという意識はあります。 ――明確に引退ということは言わないのですか? 本当はそういう区切りをつけたいんですけど、リングの上でやるべきなのか。過去に何回かセミリタイアだってことを言ってるのよ。(引退のために)場所を、そういうのを設定してやるべきなのか、どうなのかというと、もうレスラーとしてのリングの上での引退をどうのっていうのはたぶん今の段階では俺の中ではない、けど目指してるけどね。 ――今後も肩書として“プロレスラー”は使っていくのですか? どうですかね。ただ、最近はよく街なんかで声を掛けられるときに、「蝶野さん!」じゃなくて「蝶野さんですか?」になるのね。確認をしてくるのよ。昔だったら頭にきて、「なんだこの野郎!」って言っていたかもしれないけど、今は「蝶野さんですか?」ってやっぱりかつてのイメージ、今はおやじになってきて向こうも、もしかしたらあまりにイメージと違ってきてるから、違う人じゃないかっていうような。 それが今は俺の中では面白いというか、良くも悪くも変化してきてると。その変わり方を楽しむというか、60代で20代のピチピチな形を保つのは無理な話で、60歳のおやじのツッパリ方というか、そういうものをどうしようかと、そんな感じですよ。