寝屋川も履正社に惜敗。なぜ南北大阪8強戦で公立校は全滅したのか?
履正社は、4回戦には、1年生投手、田淵を先発させるなど、ゲームを任せることのできるピッチャーが3人いる。大阪桐蔭にしろ然りだ。たった一人、藤原頼みだった寝屋川とは、そもそも優勝までの7試合を戦う選手層がまったく違っている。1試合の勝負ならば、寝屋川は履正社にも勝つ可能性は十分にあった。だが、甲子園というキーワードを解くならば、大会の7試合をトータルでマネジメントできるチーム力が必要になってくる。そこに公立には、やりたくてもできない限界点が存在している。受験があるため、有力選手をスカウトできるわけでもなく、練習時間や練習環境にも大きなハンデを背負う。達監督も、ナイターでの練習試合終了後に、すぐに練習を再開した大阪桐蔭の姿を見て愕然としたという話をしていた。 ただ、その差を埋めるための努力や工夫が、南北のベスト8に5つの公立校が残る理由になったことは間違いない。だが、ここから先、ベスト4の壁を破り、甲子園にたどりつくには、もうひとつ何かプラス要素が必要になってくる。それは、私学でもレギュラーを張れるようなスーパーな選手の登場かもしれないし、3年計画で、どこまで選手の個の能力を成長させられるか、というノウハウかもしれない。寝屋川は、藤原、一貫田ら、1年生からレギュラーに抜擢された“黄金世代”が、この夏の躍進を後押しした。 達監督が言う。 「来年も同じように戦えるかと言えば、まったく別の話。次の2年生が、自分らもと思うのか、この年代は特別だった、と思うのか。このチームは、いいものを残してくれた。ちゃんと追いかけるべき。何がよくて、何が足りなかったのか。そこを反省してチームをもう一度リセットしたい。それができれば甲子園は射程圏内に入ってくると思う」 神戸大、大阪市立大への進学を目指し野球を続けたいという藤原も後輩へメッセージを託す。 「今日、勝てば甲子園が見えてきて、準決勝で対戦予定だった大阪桐蔭も視野に入れていた。だから、ここを絶対に勝たないと甲子園に行けないと、いつものピッチングができなかった。そういう気持ちになってしまったのが、私学との差かもしれない。相手が私学だから、と名前負けするのも公立の弱さ。その差で負ける。後輩には、それだけはして欲しくない」 名前負けという名のコンプレックスは、歴史の積み重ねが解決してくれるもの。寝屋川を筆頭に、5つの公立高が、この暑い大阪の夏に残した軌跡は、きっと、そう遠くない未来へつながっている。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)