【評伝】「知るは楽しみなり」番組台本は持たない「放送界最後の職人」…元NHKアナ鈴木健二さん、95歳の大往生
NHKの元アナウンサーで、同局の「クイズ面白ゼミナール」「歴史への招待」などの司会で知られた鈴木健二(すずき・けんじ)さんが3月29日、老衰のため福岡市内の病院で死去していたことが3日、分かった。95歳だった。 * * * 「面白ゼミナール」で、教授に扮(ふん)した鈴木さんの冒頭あいさつでの「『知るは楽しみなり』と申しまして、知識をたくさん持つことは人生を楽しくしてくれるものでございます」という言葉。豊富な知識に裏打ちされた圧巻のアドリブ力は、まさに「知るは楽しみなり」を体現する唯一無二のアナウンサーだった。 「歴史への招待」や「面白」では、テーマが決まると自腹を切って数万円分の専門書を購入。読書に週40時間は費やし、NHKの自らのデスクには600冊以上、本が山のように積み上がっていたという。番組を進行する際に台本や資料・メモを手にしたことは一度もなく「放送界最後の職人」と称されたことも。携帯電話やパソコンを生涯持たず、原稿も手書き。自らの脳を駆使して知識を調べることにこだわった。 戦中、戦後の混乱を生き抜き、「感動なしに人生はあり得ない」「人のために生きてこそ人」が信条。退職後は村おこし事業や、障害者と健常者が合唱する「こころコンサート」などに情熱を傾けた。巨人ファンとしても知られ、川上哲治さん、王貞治さんなどを慕った。最近では大谷翔平や競泳の池江璃花子の活躍を楽しみにしていることを著書につづっていた。
報知新聞社