入社24年目の日テレ・森圭介アナ「news every.」で初の報道番組メインキャスター 「強敵に『ひのきのぼう』で臨んでいるようなもの」
今春から日本テレビ系「news every.」のメインキャスターを務めるのが同局の森圭介アナウンサー(45)だ。14年間、番組の顔を務めた藤井貴彦キャスター(52)からバトンを引き継ぎ、初の報道番組キャスターに試行錯誤しながら臨んでいる。入社24年目で飛び込んだ報道の世界は、未知の経験の連続。四苦八苦しながら食らいついている真っ最中だという。(宮路 美穂) 【写真】愛用のキヤノンの一眼レフを大事そうに手に取る森アナ 新生「―every.」がスタートして約2か月。鈴江奈々アナ(43)とともにアンカーポジションを務める森アナは正直すぎるほど正直に「なじんでないですね…」と語る。 「キャスターとしてどうなんだ、と思われるかもしれませんが、ここまで一日も『今日はできたな』って思ってないし、毎日初めてのことが起きている。子どもが初めて自転車に乗ろうと練習している気分です。毎日転びながら、でも鈴江さんとか陣内(貴美子)さん、斎藤佑樹さんと桐谷美玲さんが自転車を横で支えてくれて、何とかひとこぎしようとしている感じ」。午後7時に生放送が終了すると、自然と「イエーイ! やったね」と拍手が出るという。 藤井キャスターの「every.」から「news zero」への“移籍”に伴い、森アナが後任の打診を受けたのは昨年末。「今でも映像がスローモーションで浮かぶほど、青天の霹靂(へきれき)でした。アナウンス部長に呼ばれ『4月からevery.』と言われて『はぁ? 何言ってるんだろう?』と思った。どこかに(ドッキリの)カメラがあるんじゃないかと思って、目線を動かさないようにカメラの位置を探すぐらい信じられなかった」 入社24年目の45歳。「スッキリ」「ZIP!」など朝の情報番組を主に担当してきた。「ボールの軌道で言うと、もうアナウンサーのキャリアとしては、後は着地点を見つけていくっていう時期だと思っていました。まさか新しい挑戦をこのタイミングでさせてもらえるなんて」。報道は「NNN Newsリアルタイム」でエンタメコーナーの担当をしていた2007年以来、17年ぶり。「報道フロアに立ち入ったことがほとんどなくて。私には縁のない世界だなって思っていたんです」 これまでも長時間の生放送をさばいてきた森アナ。しかし「情報番組と報道番組では全く使う文法が違う」と語る。「原稿を読んで伝えるという意味では同じなんですけど、報道の記者さんたちが取材をしてくれたものが詰まった原稿の中には、絶対に間違ってはならない事実がある。この一字一句を変えてしまうことによって、記者の皆さんが取ってきてくれた事実が、違う解釈で出ちゃうかもしれない」。取材記者へのリスペクトと同時に、原稿を預かる責任を痛感している。 キャスター就任直後の4月3日には、台湾東部で発生した大地震の取材のため現地に飛んだ。「日本時間の朝9時に地震が起きて、昼にはもう家を出ていました」。災害直後の現場に足を運んだのは初めてだった。 「現場でどういう視点で何を見て、どう言葉にするのか。さらに番組には『確定』と呼ばれる、この時間に強制的に映像が途切れてしまうタイミングがあるんですね。普段はスタジオで時計を見ながらやっていますが、海外で初めて確定をやらなきゃいけなかった。1秒ズレていたら言葉足らずで終わってしまう世界。藤井貴彦さんはそれをいとも簡単に、どんな災害現場からでも1秒もこぼすことなくやっていたんだな、って…」 藤井キャスターは森アナにとって、入社直後から食事に連れて行ってもらった「お師匠さん」のような存在だ。「先日も一緒にご飯を食べたんですけど、何も言ってくれない。『(放送を)見てない』と言われました(笑い)。『モリスケだったら大丈夫』としか言ってくれない。でも、貴彦さんがそうやって言うんだったら…と。その言葉をよりどころにしてやっています」 報道キャスターとしては1年生。「貴彦さんが勇者の鎧(よろい)や剣で戦っていた強敵に『ひのきのぼう』で臨んでいるようなもの」とゲームに例えて苦笑するが、これまで培ってきたエンタメ取材やスポーツ実況の経験、スタジオでの空間把握能力が「every.」にもたらす変化もきっとあるはずだ。森アナさえも使えることを知らない呪文が口をついて出る日がくるかもしれない。「可能性はありますよね。そんな日を待ってます」 アナウンサーとしてのキャリアは、「every.」を機に一気に混沌(こんとん)とし始めた。「去年までは自分の着弾点は何となく見えてましたけど、今はボールが強風にあおられてどこに着くか全く見えてない。45歳にもなって…」と苦笑する。 「でもひとつだけ言えるのは、藤井貴彦さんみたいなアナウンサーじゃないアナウンサーになろうかなって思ってます。なろうと思ってもなれないし、気にするほど背中って大きく感じる。普通なら偉大な先輩の背中を追いかけるんだと思いますけど、絶対に追いかけないぞ、という覚悟で。こんなこと言ったらまた笑われるかもしれませんけど…」。新たな冒険を始めた45歳。視聴者には森アナとともに冒険の行方を見守る楽しみがありそうだ。 ◆森 圭介(もり けいすけ) ▼生まれと経歴 1978年11月、埼玉・越谷市出身。一橋大社会学部卒業後の2001年に日本テレビ入社。高校、大学では演劇をやっており「芝居で食っていけるほど易しい世界ではなかったけど、誰かに表現を届けることは好きだった。たまたま大学の就職情報掲示板にアナウンサーの募集要項が貼ってあって…」。 ▼水卜麻美アナ 「スッキリ」「ZIP!」で共演し、先輩後輩の垣根を越えた盟友に。「今回の『every.』(への起用)もかなり早い段階で言いました。彼女は察する人なので『何かありましたね?』と…。後輩ですけど理想の上司。背中を押してくれたひとりです」 ▼箱根駅伝 05年の81回大会から19年連続でリポートに関わってきたベテラン。今年の100回大会は復路のフィニッシュ担当だったが「every.」の打診後だったため「最後かもしれないと思って、箱根のありがたみを感じてやっていました」。次回大会以降の出演がかなうかどうかは未定。「来年の正月に答え合わせをしていただけたら…」 ▼音楽愛 大の音楽好きで「心の根っこにあるのはチャットモンチー、くるり、サニーデイ・サービス。同じものしか聴かなくなってしまうのが怖いので、プレイリストのおすすめをランダムに聴いています」。ギター演奏も趣味で「うまくいかなかった日はアンプをつないでサンボマスターを弾きます」。 ◆森アナのイチオシ 最近は朝活をしています。15年も朝の情報番組をやっていたので、今も目覚ましなしで4時には起きちゃう。最近は二度寝のスキルを身につけましたが…。朝はジョギングをしてから会社に向かいます。 走っている時にはラジオを聴いています。「オールナイトニッポン」やTBSラジオの安住紳一郎さんや井上貴博さんの番組、フジテレビの宮司(愛海)さんのポッドキャストとか…。ラジオが大好きなんですけど、走っている時にだけ聴くことを自分に強制している。そうすると「オールナイトニッポンが聴きたい!」となって走りに行くんです。 本来は寝るのがすごい好きなんです。だから強制的にやることを決めていく。一眼レフのカメラを持って外に出たら寝ないじゃないですか。先日は、渋谷のスクランブル交差点をバックに自撮りしている80歳くらいの外国人のおじいちゃんに「Can we take a picture?」と声をかけて一緒に写真を撮りました。 09年に「ズームイン!SUPER」のエンタメコーナーを担当した時、番組スタッフから「君は日本一の朝の情報番組の芸能キャスターなんだから、日本一芸能・エンタメのことを知らないとダメだよ」と言われたんです。そこからはとにかくインプット。今も映画やライブに行くと「これを15秒で言うんだったらなんて言うかな」って思いながら見てます。 音楽でも写真でもコミュニケーションを取るきっかけになる。今までの経験や好きなものが今後「every.」に還元できたらいいなと思います。(談)
報知新聞社