〈意外と知られていない鉄道貨物の世界〉「物流2024年問題」へどう寄与するか、鉄道輸送の実態と位置づけ
数字で振り返るJR貨物発足から35年の歩み
国鉄民営化の一環としてJR貨物が発足した1987年4月1日以降、国土交通省の「鉄道統計年報」で現在公表されている2021年度までの35年間のJR貨物のコンテナ輸送を中心とする貨物輸送の推移を、数字で振り返ってみた。 まず下図は、コンテナ輸送量と車扱輸送量の推移を追ったグラフである。1987年以降の35年間で車扱貨物は約5分の1程度に大幅に減少したのに対して、コンテナ貨物は、年度によって増減はあるものの、全体的には横ばい以上の微増傾向にあることが読み取れる。 その結果として現時点では、下図が示す通り、JR貨物の輸送量に占めるコンテナ貨物のシェアは、発足時点の24パーセント程度から70パーセント前後にまで至っている。この大きなシェア拡大は、コンテナ貨物が大きく拡大したからではなく、車扱貨物が大きく減少したために現出したことを念頭に置いて頂きたい。 次に、上の図3および図4のような状況の中、JR貨物のキャパシティー、すなわち貨物輸送・取扱能力がどのように変化してきたか、見ていきたいと思う。 残念ながら、鉄道貨物輸送に関する統計数値のほとんどはコンテナ貨物と車扱貨物に仕分けられていないので、まずはJR貨物の総輸送量(コンテナ貨物+車扱貨物)とキャパシティーに関わる各数値の推移を見ていくこととする。 下図は、JR貨物の総輸送量の推移を棒グラフで、貨物駅数の推移を折れ線グラフで示したものである。 ご覧の通り、JR貨物の貨物駅数は、貨物量の減少よりも若干緩やかではあるものの、この35年間ほぼ平行して減少してきたと言ってよいであろう。
下図は、JR貨物の機関車数の推移を、上図と同様に総貨物量との対比で示したものである。機関車数も貨物駅数と同様、貨物量の減少よりも若干緩やかではあるものの、ほぼ平行して減少してきたことが読み取れる。
計画的に事業を縮小
そして下図は、貨物駅職員や機関車運転手を中心とする現業部門職員数を、同じく総貨物量との対比で示したものであるが、現業部門職員数も総貨物量よりも激しく減少していることが見受けられる。 さらに下図は、コンテナ用貨車数と車扱用貨車数の合計である総貨車数を、他の3件のグラフ同様に総貨物量との対比で示したものであるが、現業部門職員数と同様に総貨車数も、総貨物量を上回る勢いで減少していることが分かる。 ここまでに取り上げたデータにもとづけば、1987年4月1日の発足以来JR貨物は、計画的に事業を縮小してきたと考えるべきではなかろうか。