人気絵本『ねないこ だれだ』作者・せなけいこさん死去 37歳でデビュー おばけの絵本のために民俗学を学ぶ
『ねないこ だれだ』などで知られる絵本作家・せなけいこさんが、23日に老衰のため92歳で亡くなったことがわかりました。おばけや妖怪などをモチーフに、貼り絵の手法を用いたシンプルながらも独創的な作風で、世代を越え、多くの親子に読み継がれるロングセラー作品を多く生み出したせなさん。絵本作りのこだわりや、作品作りのヒントとなった出来事を過去のインタビューなどから振り返ります。 【画像】貼り絵で表現されたおばけが印象的な、せなけいこさんの絵本『ねないこだれだ』
■絵本作りの一番のこだわりは“独創性”
せなさんは、19歳の時に童画家・武井武雄さんに師事して絵を学び、37歳となった1969年に『いやだいやだの絵本』(4冊セット)で絵本作家としてデビューしました。中でも、『ねないこ だれだ』は、独自の世界観とストーリーで子どもたちをひきつけ、累計発行部数351万5000部(出版社発表)を記録しました。 長年読み継がれる絵本を生み出したせなさんが、絵本作りにおいて一番こだわっていたのは“独創性”だそうで、KUMONのうた・読み聞かせ記録アプリ『ミーテ』に掲載されたインタビューでは、「武井先生からは私の絵について、構図が悪いとか、デッサンがよくないとか、いろいろと厳しいことも言われましたが、たくさんのことを学ばせてもらいました。特に覚えているのは、『サインなしでもその人だとわかる絵を描きなさい』ということ。どこかで見たことのあるような絵ではだめなんです」と師匠である武井さんから学び、絵本作りで意識していることを明かしていました。 さらに、せなさんは「新しい作家さんの絵本を見ると、どうもきれいにまとまってしまっていて、いまいち個性が足らないように思うんですけどね。絵本は一度描くと、出版社さんががんばって売ってくださるので、30年経っても書店に並んだりしますから、それを考えると、一作一作手を抜かずにつくっていかなければと感じています」と、作品一つ一つに込める思いを語っていました。
■おばけの絵本のため「民俗学の勉強をしました」
そして、おばけや妖怪をモチーフにした作品を多く手がけたせなさん。絵本作りのヒントになったのは自身の子育ての経験だそうで、「私の絵本の一番最初の読者は息子でした。おばけの絵本をつくったのも、息子が当時『ゲゲゲの鬼太郎』をテレビで見て熱中していたからなんですよ。そんなに妖怪が好きなら、おばけを描いてみようかなって。それで、せっせとカルチャーセンターに通って、民俗学の勉強をしました」と、自身の息子が好きだったものから着想を得て、おばけの絵本を作ったと明かしました。 また、絵本のストーリーについてせなさんは「絵本にするには、根本的にストーリーから自分だけのものをつくらないといけないんです。よく後輩に言うんですけれど、絵本をつくるにはまず、勉強したり調べたりして、材料を集めるんです。材料がそろったら、その材料を煮出してスープにします。そのスープのうわずみを使って絵本をつくるわけです。手に入れた材料をそのまま出したって、つまらないんですよ。煮出して煮出して、良質のスープをつくらないと」と、料理に例えて自身の考えを明かしました。 続けて、せなさんは「材料をそろえてスープをつくりあげるのは、苦しいけど楽しいですね。好きでやっていることですから。商売のことだけ考えたら、もっと効率よく売れそうな絵本を描いた方がいいのかもしれませんけど、私は好きでやっていますから、効率が悪くてもいいスープができるまで、とことん時間をかけてつくっています」と、絵本作りへの思いを語りました。