首位独走のソフトバンクは誰が監督でも勝てるのか 小久保監督の手腕「もっと評価されていい」の声
首位を独走しているソフトバンク。打率、本塁打、防御率、勝利数など投打のタイトルを独占状態で、圧倒的な力を見せているが、小久保裕紀監督の手腕が過小評価されているように感じる。 【写真】猛バッシングにつながる敗戦…逆転負けした直後の小久保監督の表情 「誰が監督をやっても今のソフトバンクなら勝てる――」。SNS上ではそんなコメントが散見されるが、決してそうではない。 ソフトバンクは2021年から3年連続V逸となった。昨年3位に終わった後、藤本博史前監督が辞任し、小久保監督が就任。昨年オフは、FAで西武から山川穂高、トレードで巨人からアダム・ウォーカーを獲得したものの、不安定だった先発投手陣で目立った補強はなかった。今季、ウォーカーは打率.169、1本塁打と打撃不振で4月下旬に登録抹消。ドラフトを除けば、昨年の戦力からのプラスアルファは山川ぐらいだろう。 さらに、中心選手である柳田悠岐が5月31日の広島戦で負傷交代。「右半腱様筋損傷」で長期離脱した。牧原大成、三森大貴も故障で相次いで離脱した。開幕から本塁打を量産していた山川も6月は月間打率.182でノーアーチと快音が止まった。 それでもソフトバンクは順調に白星を重ねている。6月は17勝5敗1分。目下今季最多の貯金29で、2位以下に10ゲーム以上の大差をつけている(成績は7月3日時点)。 319得点はリーグ断トツ。その原動力になっているのが、不動の5番を務める近藤健介だ。打率.352、13本塁打はリーグトップ。47打点は2位と、三冠王を狙える位置につけている。昨年世界一に輝いた侍ジャパンでは2番を務め、チームでは3、4番を担うことが多かったが、今季は小久保監督の意向で開幕から5番で起用されている。野球評論家から賛否両論の声が上がったが、スポーツ紙デスクはこの起用法を高く評価する。
「4番の山川が返せなくても、後ろに近藤というポイントゲッターがいる。この並びが絶妙で、相手バッテリーは神経を使います。小久保監督は、山川が6月に絶不調になったときも4番から外さなかった。山川を他の打順にして打線全体のバランスが崩れることを危惧したのでしょう。バタバタした起用法を見せず、白星を重ねても浮つかない。泰然自若という言葉がピッタリきます。近年のソフトバンクに欠けていたのはこの姿勢でした。攻守で信じられないミスから崩れて試合を落としてしまう。スキがない戦いぶりを積み重ねることで、選手たちが自信を取り戻したように感じます」 ■韓国戦の逆転負けで激しいバッシング 小久保監督は、指導者として順風満帆なキャリアだったわけではない。12年に現役引退すると翌13年10月に「侍ジャパン」の監督に就任。指導者経験がなかったため不安視する声が上がった。 その批判の声は15年に開催された国際大会・プレミア12で最高潮に達する。準決勝の韓国戦。先発・大谷翔平(現ドジャース)の好投で3-0と試合の主導権を握っていたが、9回に悪夢が待ち受けていた。則本昂大(現楽天)、松井裕樹(現パドレス)、増井浩俊(元日本ハムなど)をつぎ込んだが、4失点を喫して逆転負け。メディアは「監督としての資質」を問う論調であふれた。 17年のWBCも指揮をとり、下馬評が低い中で勝ち進んだが、準決勝で米国に1-2で敗れ、試合後に小久保監督の退任が発表された。 当時の侍ジャパンを取材したテレビ局関係者はこう振り返る。 「世界一にはなれなかったけど、結束力の強いチームでした。小久保監督は勝つだけでなく、グラウンド上でツバを吐かないように選手に伝えるなど振る舞いを大切にしていたことが印象に残っています。プレミア12のときを思い出しても、12球団の監督だったらあんなにバッシングを受けることはないでしょう。侍ジャパンの監督時代が指導者経験の大きな糧になっていると思います」