伸びてくる若手に簡単には追い抜かせない…29歳の西岡良仁が“データと経験”を武器に世界14位ルネを迎え撃つ<SMASH>
その願い通りの試合を、西岡は展開した。相手が、西岡のフォアと自身のバックの打ち合いを極端に嫌がり、無理やりフォアに回り込む癖を徹底的に突く。特にサービスゲームでは、相手にあえて回り込ませ、逆クロスに来ることを読み切った上でラリーを優位に展開した。 そのようなポイントパターンを相手に植え付けたところで、隠し持った切り札のように、ここぞという局面で逆を突く。長い試合に持ち込めば、相手が根負けするだろうことも、想定内。3時間12分。7-6(5)、3-6、7-6(5)の死闘を戦い抜き、コートに倒れ込むと同時に、足がつる。まさに、肉を切らせて骨を断つ、本人いわく「僕らしい」勝利だった。 自身より5歳年少の選手に、2連勝後に4連敗を喫してきた事実は、西岡の中で気になる現象だったのだろう。「得意だと思っていた相手に、勝てなくなった。伸びてくる若い選手に抜かれることがあり、彼もそういう選手だった」と、試合後に西岡は言う。 だが月日の流れは、必ずしも若さの味方ではない。蓄積されたデータと経験は、それらを誰より有効活用する西岡の財産。敗戦の理由を分析し、自らのプレーをも進化させ戦略を立てた西岡が今季3度目の対戦で勝利。それが、28歳最後の試合で訪れたのも、象徴的である。 29歳になって初めて西岡が当たる相手は、オジェ-アリアシムよりさらに若い、21歳のホルガー・ルネ(デンマーク/14位)。西岡とは2023年1月に初対戦し、その時は西岡が逆転勝利。1年後の今年1月の全豪オープンでは、ストレートで敗れた。彼もまた西岡にとって、追い抜かれたと感じる若手かもしれない。 ただルネは、全米オープンを含む直近の2大会で、いずれも初戦敗退。ちなみにその敗戦の1つは、内山靖崇に喫したものだ。ルネはポテンシャルは高いものの、まだ粗削りでアップダウンも多い。西岡にとっては、戦略の立て甲斐もあるだろう。 29歳になって最初の試合で、知将・西岡が3度目の対戦となる若手相手に、どのような策をめぐらすのか? 楽しみな一戦なのは、間違いない。 ※西岡対ルネの2回戦は28日18時以降に有明コロシアムでスタート 取材・文●内田暁