能登半島地震被災者 長野県内への2次避難進まず 宿泊施設は0人、公営住宅は6世帯
能登半島地震の被災者を宿泊施設などに移す「2次避難」の長野県内への受け入れが進んでいない。県の受け入れ表明から1カ月半ほど経過した現在も県内の宿泊施設での受け入れはゼロで、公営住宅などへの入居も6世帯9人(2月27日時点)にとどまる。生活再建を重視する被災者にとって、能登地方など地元から離れた長野県への避難は心理的にもハードルが高いとみられる。 (森優斗) 【写真】能登半島地震の2次避難の受け入れ先として協力を申し出ている長野県千曲市の旅館
生活再建重視の被災者、地元から離れることはハードル
元日、最大震度7の揺れに襲われた石川県能登地方では当初、断水や停電が続くなど1次避難所での生活環境の悪化が目立った。医療や介護も十分に行き届かず、体調悪化に伴う「災害関連死」のリスクも高まっていた。 長野県はこうした状況を把握する中、石川県側に2次避難先としての協力を打診した上で1月12日に被災者を受け入れる方針を発表。長野県ホテル旅館生活衛生同業組合や市町村などを通じてホテルや旅館に協力を呼びかけ、計42市町村の179施設で計3109人分(2月20日時点)を確保。中長期的な避難を想定し、県内の公営住宅など計254戸も用意した。 2次避難は、石川県が被災者の希望を踏まえ、宿泊施設などの避難先を調整する。同県のまとめによると、長野県を含む石川県内外の1109施設で計3万1128人分の受け入れ先を確保。28日時点の避難者数は1万784人。このうち4割余に当たる4778人が238施設に身を寄せる。中でも石川県が4297人で9割近くを占め、富山県311人、福井県165人、岐阜県3人、愛知県2人で、長野はゼロ=表。被災地から離れるほど2次避難先として選択肢に入りにくい状況が鮮明だ。 石川県観光戦略推進部は、「被災者の多くは生活再建のため、石川県内への2次避難を希望している」と説明。宿泊施設の受け入れ期間など、条件が合わない場合に県外に移ってもらっているとし、被災者の受け皿として県外の施設も選択できるようにしたい―とする。 宿泊施設とは別に、長野県が用意した公営住宅への入居者は家族や親戚など県内につながりがある人が多く、「知らない土地に生活拠点を移す決断は難しいのではないか」(県公営住宅室)とみている。