探し続けた"チームのためにできること" 4年生として声をかけ続け、練習相手にも「試合に出ている選手にはこれからがある」
大学生活最後の全日本インカレを、不完全燃焼で終わりたくない。 4年生として、チームのために何ができるか。早稲田大学の浅野翼(4年、東北)はアップゾーンからコートに立つ選手たちへ声をかけ続けた。「今までやってきたことを出すだけ。自信を持って行こう」 【写真】セット間に気付いたことを共有するため、コートに立つ仲間を呼び寄せる
第1セット先取も「迷っている感じが伝わってきました」
準決勝まで5日連続で戦ってきた疲労もあり、試合前の練習時からスパイカー陣の動きが少し重いのが気になっていたが、試合が始まれば第1セットの序盤から前田凌吾(3年、清風)がミドルブロッカーの菅原啓(2年、山形南)や麻野堅斗(2年、東山)を効果的に使い、7-4と先行した。 勝てば決勝進出。気合も入るが、いつも通りやれば大丈夫。浅野はアップゾーンの最前列で試合の行方を見守った。日本体育大学の攻撃に対し、中盤にはブロックポイントも加算してリードを広げ、25-21。第1セットを先取した。 第2セットも3本のブロックで4-0と先行。幸先良いスタートを切ったが、リバウンドを取ろうとブロックに当てたボールがそのまま落ちてしまったり、これまでならば着実に取ってきた勝負どころのスパイクでミスが出始めたりした。勝っているとはいえ、浅野はベンチで不安も抱いていた。 「思っているプレーができていない。相手にやられているというよりも、自分たちがやるべきことができなくなって力を発揮しきれていなかった。フリーボールからの攻撃が決まらなかったり、(セッターの)凌吾もスパイカーも、迷っている感じがすごく伝わってきました」
すべてを出し切れず、大会連覇ならず
気付いたことはすべて共有する。タイムアウトの際や交代で下がった選手にその都度伝えた。 「たとえ決まらなくても『俺が決めてやる』という姿勢を見せるだけで相手は嫌だから、1本決まらなくてもトスを呼んだほうがいい。簡単に取れない時は、どうにか工夫して点につなげていこう」 だが、日体大は逆転の糸口をつかむべく、サーブで攻めてきた。早稲田大は山元快太(3年、仙台商業)のサーブ時、2本のサービスエースを含む9連続失点。16-22と逆転を許し、第2セットを日体大に譲った。続く第3セットも吉村颯太(4年、東山)のサーブや髙附雄大郎(4年、鹿児島商業)の好守で勢いに乗った日体大が23-25で連取。第4セットは早稲田大が麻野のサービスエースや前田のブロックで得点を重ねて25-21。最終セットに突入し、最後までひるまず攻め続けた日体大が12-15で押し切った。早稲田大の大会連覇はならなかった。 すべてを出し切ることができずに喫した敗戦に、主将の前田は「涙も出なかった」と言う。「何もできなかった」と思っていたのは4年生の浅野も同じだ。「日体大の4年生たちの意地が出た。この1年、うまくいかない時や苦しい時間があった中で、最後のインカレにかけてきた。その思いの大きさを体現していました」