<W杯アジア最終予選>タイ戦圧勝の裏で露呈したハリルジャパンの穴
攻めては今回のアジア最終予選で最多となる4ゴールをあげて、守っては23日のUAE(アラブ首長国連邦)代表戦から守護神に復帰した川島永嗣(FCメス)が、PKを阻止するなど無失点に封じた。 タイ代表を4‐0で一蹴した28日のW杯アジア最終予選。もっとも、埼玉スタジアムの取材エリアに姿を現した日本代表の選手たちは、スコアほどの充実感を漂わせてはいなかった。 右ひざの負傷で離脱したMF長谷部誠(フランクフルト)に代わり、2試合連続でキャプテンを拝命。後半38分には4点目を決めた、DF吉田麻也(サウサンプトン)に笑顔はなかった。 「結果は評価できますけど、内容は全然ダメでしたね。選手間の距離が長かったし、ボールの失い方も悪かっ た。無失点で終えられたのは奇跡に近かったと思う」 取材エリアに隣接する記者会見場。日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督も、勝利を称えながら「内容に不満を抱く点もあった」と自ら切り出した。 「少し気を抜いてしまったのか、集中力やハードワークが足りなかった。フラストレーションを感じさせるような、あまりにも簡単なパスミスが多かった時間帯もあった。対戦相手がより高いレベルだったら、まったく違った展開になっていたかもしれない」 開始8分にMF香川真司(ボルシア・ドルトムント)が先制点を、19分にはFW岡崎慎司(レスター・シティ)が史上3人目となる代表通算50得点目を、ともに成長著しい23歳のFW久保裕也(ヘント)のアシストから叩き込んだ。 約5万9000人のファンやサポーターで青く染まったスタンドに充満したゴールラッシュの予感は、しかし、直後から萎んでいく。イージーなパスを何度相手にわたしてしまったことか。球足の遅いパスを何度カットされたことか。 前半39分からの3分間には、久保、MF山口蛍(セレッソ大阪)、DF森重真人(FC東京)、MF酒井高徳(ハンブルガーSV)が立て続けにパスミスを犯し、そのたびにスタンドからため息が漏れた。 3点目は後半12分の久保のミドル弾まで待たなければいけなかった。選手たちに蓄積した疲労や、タイが予想以上にアグレッシブに前へ出てきたこともある。それでも、最終予選で未勝利が続く最下位を相手に、なぜ指揮官をして「パーフェクトではなかった」と言わしめる試合を演じてしまったのか。 理由のひとつに安ど感がある。