肺がん検診の「異常なし」を信じてはいけない…「もう手術はできない」と宣告され、7年闘病した40代男性の後悔
■「検査を毎年受けていれば早期発見できると…」 その後、男性が肺がんと診断された前年の胸部X線画像にも、微かな影が写っていたことが判明する。 心臓と重なる位置に肺がんがあったことから、見逃されたのではないか? 勤務先の会社が、健康診断を行った医療機関に問い合わせをしたところ、「前年に肺がんを指摘することは困難」として、見逃しを否定した。 男性は仕事を続けながら、抗がん剤などに毎月約10万円の治療費を払い、闘病生活を送ることになる。 「もし、前年に肺がんの見逃しがなければ、転移(胸膜播種)する前に手術で完治できたかもしれません。悔やんでも悔やみきれませんが、医療に詳しいわけではないので、胸部X線検査で早期発見できると思っていました」(40代男性) がんが発見されて7年間、男性は精一杯生き抜いて、最期は愛する家族に見守られながら自宅で息を引き取った。 ■発見時期によって5年生存率は雲泥の差 全てのがんのうち、肺がんは最も死亡数が多く、年間で約7万6千人が命を落としている(がん情報サービス・最新がん統計)。このうち男性が約5万3千人と、女性の2倍以上を占めているのは、喫煙の影響と言われている。オプジーボなどの画期的な新薬が開発されているとはいえ、肺がんは依然として手強いことに変わりはない。 完治の目安とされる5年生存率(※)をみると、肺がんのステージ1は「85.6%」だが、ステージ4では「7.3%」になる。発見された時期(ステージ)で、肺がん患者の明暗は大きく分かれるのだ。 (※)がん患者が治療によって生存できる割合を算出した相対生存率を記載 ---------- 肺がんの5年生存率 「ステージ1:85.6%」「ステージ2:52.7%」「ステージ3:27.2%」「ステージ4:7.3%」 (全国がんセンター協議会から引用) ---------- 肺がんを完治させる第一選択は、外科手術だ。ステージ3の一部までが、外科手術の適応となる。(「肺癌診療ガイドライン(2023年版)」) 肺がんの外科手術といえば、肋骨を切断するなどして胸部を20センチほどに広げる「開胸手術」が一般的だったが、強い痛みが残るなど後遺症が避けられなかった。 現在では、患者の体力的な負担が少ない「胸腔鏡下手術=VATS(バッツ)」が主流となっている。VATSとは「Video Assisted Thoracic Surgery」の頭文字をとった略称だ。