MADな変態が大集合!主人公をも食うインパクトを放つ「マッドマックス」の悪役大図鑑
巨匠ジョージ・ミラー監督による傑作シリーズ最新作『マッドマックス:フュリオサ』が5月31日(金)より公開される。近未来の荒廃した世界を生きる孤高の男の活躍を描いた「マッドマックス」シリーズといえば、悩める主人公マックスとは対照的なぶっ飛んだ悪役も大きな魅力。ここでは歴代作品を彩ったインパクト抜群の悪役を作品ごとに振り返っていきたい。 【写真を見る】イモータン・ジョー、ヒューマンガス、トーカッター…「マッドマックス」の心惹かれる悪役を集めてみた(『マッドマックス 怒りのデス・ロード』) ■弱者にも情けなし!シリーズきっての極悪チンピラ、トーカッター シリーズの原点である1979年の1作目『マッドマックス』は、凶悪犯罪が多発する近未来のオーストラリアを舞台に警察官のマックス・ロカタンスキー(メル・ギブソン)が、血で血を洗う暴走族との戦いに身を投じる、はじまりの1作。 本作でマックスと対峙する暴走バイカー集団のトップに君臨するのが、一部が白く染まったボサボサの蓬髪をなびかせ、顔の周りにはハエが飛び回るダーティな男、トーカッター(ヒュー・キース・バーン)。マックスの妻ジェシー(ジョアン・サミュエル)と息子スプローグ(ブレンダン・ヒース)を車で轢き、スプローグを死に追いやるなど子どもにも情け無用。シリーズ随一の極悪非道なキャラクターだ。 敵だけでなく身内にも容赦なく、部下のジョニー(ティム・バーンズ)がヘマをすれば、そのケジメとしてジョニーに圧をかけ、警官グース(スティーヴ・ビズレー)を殺害させるという地元の嫌な先輩ムーブを発揮。ほどよいヤンキー感を漂わせたトーカッターだったが、最期は怒れるマックスに追われてバイクごとトラックに突っ込むというあっけないものだった。 ■変態ファッションとブレないカリスマで大人気のヒューマンガス様 家族を失った悲しみからもぬけの殻になったマックスを描いた『マッドマックス2』(81)。元警官のマックスは生きる希望を失い、愛犬と共に砂漠と化した地球を愛車インターセプターで彷徨っていた。そんななか、石油精製所にたどり着いたマックスは、石油をねらう悪党集団に悩まされる住民たちに協力することに…。 荒れ果てた世界でなによりも価値がある石油をねらい、略奪を繰り返す無法者集団の長、ヒューマンガス(ケル・ニルソン)が今作のヴィラン。マスクで顔を覆い、筋骨隆々のボディに身につけるのは鋲の付いたサスペンダー&パンツ一丁のみ。“筋肉の鎧”を地で行くボンデージファッションがとにかく強烈だ。 そんな変態的なビジュアルとは裏腹(?)に、石油精製所の住民に対し「おれ様は失望したぞ。ガソリンを独占しようなんて勝手すぎる」と公正を求め、まずは対話で問題解決を図る分別のある男。部下が暴走しようものなら身を挺して止めようとする器の大きさも見せる。また、要求に応じなければ暴力で脅す非情さも持ちあわせており、“ヒューマンガス様”と慕うファンが多いことも納得のカリスマぶりを見せつけた。 そんなヒューマンガスの大物ぶりを際立たせるのが小物感漂う部下たち。冒頭からマックスをつけねらう、血の気の多い赤モヒカン巨漢男ウェズ(ヴァーノン・ウェルズ)をはじめ、ウェズが投げた鉄のブーメランをキャッチしようとして指を失うトーディー(マックス・フィップス)、その一部始終を見て爆笑するモブたち含め、どいつもこいつも愛すべきキャラクターだった。 ■デスマッチで敵を排除!町を支配する女帝アウンティ グッとハリウッド色がアップした3作目『マッドマックス サンダードーム』(85)。物々交換で成り立つバータータウンに流れ着いたマックスは、何者かに奪われた自分の持ち物を取り返すため、町の支配者アウンティ・エンティティ(ティナ・ターナー)に協力。町の動力源を握る裏の権力者と金網ドームでデスマッチを戦うことになるが…。 この“サンダードーム”で戦う相手が、頭脳派の小人男と怪力巨躯男からなる漫画的な2人組マスター・ブラスター。顔をマスクで覆う謎めいたブラスター(ポール・ラーソン)は圧倒的なパワーでマックスを苦しめるが、実は知的障がいを抱えており、中身はほんの子ども。そんな彼を始末し、町を完全に掌握しようとするアウンティこそが本作の真のヴィランだ。 ゴージャスな金髪がまぶしいオーラあふれるたたずまいで、パワフルな演説をぶつ姿はまさに女帝。不気味な人形の首がついた棒を背負ったアイアンバーなど彼女を慕う部下も個性的で、その不穏さを盛り上げていた。 ■周囲を道具として扱う、白塗り独裁者イモータン・ジョー マックス役をトム・ハーディにバトンタッチし、30年ぶりに制作された『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)。流浪の最中に襲撃され独裁者が支配する砦に捕らえられたマックスが女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)らと共に自由を目指して反旗を翻していく本作で、マックスたちに立ち塞がるのがイモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)だ。 全身白塗りに加え、ドクロをモチーフにした酸素マスクや透明なアーマー、胸の勲章などおっかない見た目のジョーは中身もどうかしている最悪の男。 “勇敢に戦って死ねば「英雄の館」へ行ける”と教えるカルト宗教で若い男たちを白塗り特攻集団“ウォーボーイズ”に仕立て、美しく若い女性たちは自分の子どもを生ませる“ワイブス”として“所持”。さらに庶民には適度に水を与えて黙らせるなど、自分の世界を作るために周囲をコマとして扱う極悪非道な暴君だ。 脇を固めるキャラクターも個性豊かで、ジョーの息子たちは筋骨隆々だが知能の低いリクタス(ネイサン・ジョーンズ)と頭脳明晰な小人症のコーパス(クウェンティン・ケニハン)は『~サンダードーム』のマスター・ブラスターを思わせる。 仲間もクセ者ぞろい。くり抜かれたスーツの穴から露出したピアスのついた乳首をことあるごとにいじる金好きの太った男、人食い男爵(ジョン・ハワード)や、銃弾を差し歯代わりにし、指揮をするかのように銃をぶっ放す武器将軍(リチャード・カーター)など、イカれた悪役の宝庫だった。 ■あのヒーローそっくり!赤マントの暴君ディメンタス将軍 そして『~怒りのデスロード』の前日譚となる『マッドマックス:フュリオサ』。フュリオサ大将軍の若き日をアニャ・テイラー=ジョイ主演で描く本作で、悪役として登場するのがクリス・ヘムズワース演じるウォーロード・ディメンタス将軍だ。 若きフュリオサを連れ去る暴走バイカー集団を率いるディメンタス将軍。筋骨隆々のボディに赤のマントをなびかせる姿はさながら某MCUヒーロー。鼻が詰まったような甲高い声や不敵な笑顔、胸元に携えたクマちゃんのぬいぐるみ、マネキンが添えられた改造バイクなど、ひと目でMADなことがわかるキャラの立ちっぷりが潔い。 天然の要塞“シタデル”を牛耳るイモータン・ジョーとの覇権争いを繰り広げることになるディメンタス将軍がどんな恐ろしい蛮行を繰り広げてくれるのか、楽しみなところ。主役以上の存在感を放ち、観客に強烈なインパクトを与えるナイスなヴィランたちにも注目して、最新作をチェックしてほしい。 文/サンクレイオ翼