鎌倉高校前踏切、河津桜……中国版「インスタ」が生んだ観光名所
観光需要が回復するに伴い、東京や大阪の街中は再び大勢の観光客で賑わうようになった。そんななか、中国人が大挙して訪れる特定の飲食店や観光スポットには、他の地域からの観光客がそれほどいないことに気づいた人も多いのではないだろうか。例えば、中国でも人気を博したバスケットボールが題材の漫画「スラムダンク」で有名になった江ノ電の鎌倉高校前駅は、まるで申し合わせたかのように、常に大勢の中国人観光客であふれかえっている。 こうした現象にはさまざまな要因があるが、中国版インスタグラムと言われる「小紅書(RED)」が重要な役割を果たしているのは確実だ。 小紅書は美容、娯楽、旅行など生活に関わるさまざまな情報が飛び交うソーシャルメディアで、そこから多くのフォロワーを抱えるインフルエンサーがたくさん誕生している。この便利なSNSは中国の若年層、特に若い女性に絶大な人気を誇る。中国人観光客にとっても旅行のプランを練るのに欠かせない重要なツールとなり、旅行計画に影響を与えるようになった。
例えば、秋葉原界隈のあるスープカレー店に入ると、客の大部分が中国語を話している。こうした中国人客は皆、小紅書で推薦されているのを見てこの店に来ているのだ。また、2月下旬に伊豆で早咲きの河津桜が見頃を迎えたころ、河津を訪れる人々、特に中国人観光客のほとんどが川沿いの遊歩道を歩いていた。というのも、小紅書で「河津」をキーワードに検索してヒットするのは、ほぼ全てこのエリアで撮られた桜の写真なのだ。 小紅書が成功した理由は、非常に豊富なUGC(ユーザー生成コンテンツ)だ。SNSのコンテンツはある規模にまでなると、今度はコンテンツそのものがツールとしての意味を持つようになる。例えば、上で紹介したような観光地の攻略に関するコンテンツは、旅行会社のプラットフォームとは異なる。後者は旅行サービスや商品を販売するのが目的だが、小紅書で紹介されている攻略法は個人がシェアするもので、マイナーな観光スポットや現地の文化体験を希望する若い旅行者のニーズを満たしてくれる。