100歳で主演「私、できると思う」90歳・草笛光子が単独初主演映画のシリーズ化希望「気力、体力が充実しています」
女優の草笛光子(90)が21日公開の映画「九十歳。何がめでたい」(前田哲監督)で1950年のデビュー以来、74年のキャリアで初めて映画単独主演を飾る。100歳の作家・佐藤愛子さんの人気エッセーを実写化。佐藤さん役の草笛がこのほど、前田監督とスポーツ報知のインタビューに応じ、撮影エピソード、女優としてのこだわり、人生観などを告白。同作のシリーズ化も希望し、100歳での主演に意欲を見せた。(有野 博幸) 【写真】姉妹共演した草笛と冨田恵子 パステルカラーの衣装がよく似合う。昨年10月に90歳の誕生日を迎えた草笛はエネルギッシュでチャーミング。「自分で年齢は感じませんね。気力、体力が充実しています」と語り、写真撮影では、片方の足を腰の高さまでヒョイと上げてポーズを決める。松竹歌劇団(SKD)出身で日本ミュージカル界の先駆者としての気品は健在だ。 ストレスのない食事と睡眠が健康の秘けつ。「昼と夜の1日2食で、その間におやつを食べています。夜中に本や新聞を読むので、朝はゆっくり寝ていることが多いですね」。食事は肉料理が大好きで、撮影の待ち時間にはチョコレート、クッキー、せんべいを食べることも。ビールやシャンパンも好きで、晩酌をして一日の疲れを癒やしているという。 「九十歳。―」では、直木賞作家・佐藤愛子役を演じた。歯に衣(きぬ)着せず、バッサリと物事の核心を突くのが痛快だ。「ほぼ愚痴を言ったり、文句を言ったり、好き勝手なことばかりで『いつもの草笛さんと変わりませんね』と嫌みを言われながら撮影しました。私は何事にも忖度(そんたく)しないで、あるがまま、自由なんです。『そのまんま光子』ですから、佐藤さんには共感します。割と自由に泳がせていただきました」 「老後の資金がありません!」(2021年)に続き、前田監督とタッグを組んだ。正月に自宅に招くなど、気心の知れた間柄。犬を叱る場面で、草笛が飼っていた愛犬を思い出して泣いてしまうと、監督から「そこは泣かない!」「叱ってください!」と指示が飛んだ。監督は「敬愛する気持ちは忘れず、言うべきことは言わせていただきました。現場では草笛さんの自由さ、ある種の天然さが愛らしく、みんな大好きになっていました」 草笛演じる作家と、唐沢寿明(61)演じる担当編集者・吉川のやり取りが見どころだ。吉川が届けた著書を「売れてたまるか!」と突き返す場面は、草笛のアドリブだ。本人は「私自身は老いと億劫(おっくう)と闘うのが精いっぱいでしたから、他に目を向ける余裕がありませんでした」と語るが、前田監督は「佐藤愛子先生になりきっていた。このアドリブはすごい!」と文句なしで採用を決めた。 撮影は約2か月間。クランクアップで花束を渡された草笛は「次は、どうするの?」と監督に尋ねた。前田監督が「シリーズ化して続けるのはどうですか?」と提案すると、「『百歳。何がめでたい』いいわね。私、できると思う」と意欲を見せた。草笛の単独初主演映画は、老若男女すべてに人生の幸せとは何かを問い掛け、優しく背中を押してくれる。 ◆草笛 光子(くさぶえ・みつこ)本名・栗田光子。1933年10月22日、神奈川県横浜市生まれ。90歳。50年、松竹歌劇団に入団。「ラ・マンチャの男」「シカゴ」などの日本初演に参加した日本ミュージカル界の草分け的存在。53年に「純潔革命」で映画デビュー。主な出演作に映画「社長シリーズ」「犬神家の一族」「沈まぬ太陽」「武士の家計簿」、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」など。 ◆冨田恵子と姉妹共演 草笛と妹の冨田恵子(87)による姉妹共演が実現した。「何十年ぶりですかね。以前、共演した時には2人とも笑い転げて芝居にならなかったので心配していましたが、今回は無事に撮り終えることができました」。他にも真矢ミキ(60)、オダギリジョー(48)、清水ミチコ(64)、石田ひかり(52)、三谷幸喜(62)ら豪華キャストが「草笛さんのために」と集結した。
報知新聞社