明治大正の「カブトビールいかが」復刻販売で注目 国文化財・半田赤レンガ
製造断られることも。文献見つかっても数値に誤差……ビール復刻の苦労
カブトビールを作っていた丸三麦酒は歴史上、現在の大手ビールメーカーともつながりがあった。そこでメーカーの資料室などに協力してもらい、資料収集にあたった。すると明治時代のビールに関する文献が見つかった。特徴はアルコール度数が、現代のビールより高く、苦味も強く赤褐色、ワインに近い味わいのビールだったという。 集めた資料を元に、大手ビールメーカーに製造を打診した。ところが、大量生産するビールでは無かったため、断られてしまった。そのため、グループメンバーの人脈を生かして地元の地ビール会社に商品化を依頼。試作品をメンバーで試飲会して意見を出し合い、改良を重ねて05年、発売にこぎ着けた。建物の限定公開時に販売すると、買い求める人の長蛇の列ができ、すぐに完売するほどの人気となった。 一方、大正時代のビールは、14年に分析表が見つかった。糖分や炭酸の量など細かい数値が書かれていたが、その通りに作ると、苦味にコク、芳醇(ほうじゅん)な香味や赤く艶やかで透き通った色合いなど、当時のビールの特徴とはほど遠い試作品ができあがった。原因は、当時の分析精度で、数値には誤差があった。そこで食品工業技術の専門家に指導を仰ぎ、数値の誤差を修正して考えられる試作品2タイプを作った。グループで試飲を行い、商品候補を絞り込んで今夏、発売に至った。
活動の今後 昭和初期のビール復刻も視野に 建物の魅力向上へ
同所は耐震改修などを経て、15年に常時公開となった。復刻版ビールの販売や、カブトビールの歴史などを学べる資料展示もあり、建物の保存や公開など、グループとしての一定の目標は達成した。今後について馬場さんは「建物の魅力向上を図るためのガイド養成」を課題に挙げる。 グループメンバーのほとんどが仕事に就いているため、常時のガイドボランティア活動ができない現状がある。そこで本年度からガイド養成講座を開いて建物やカブトビールについての知識を継承し、来場者サービスの向上を目指す。 実は、昭和初期のビールの成分表もすでに見つかっている。復刻に使えるデータであるが「すぐに復刻はしない」と馬場さん。ビールは建物に注目してもらうためのアイテムであり、あくまでも主役は建物。昭和初期のビールは、建物の効果的な周知が期待できるタイミングで復刻させるという。 (斉藤理/MOTIVA)