「万有引力」と「重力」の違いを子供に説明できますか?ちなみに「重力=万有引力」ではありません。
「重力」という言葉について整理すると
ここで、重力という言葉について整理したいと思います。 少しややこしいのですが、地球科学では、地表の物体に働く重力は、地球の質量による万有引力と、地球の自転による遠心力とを合わせた合力(ごうりょく)をそうよぶ習慣があります。 そのため、地球科学では「万有引力=重力」ではありません。遠心力とは、電車や自動車に乗っているときに、カーブで身体が外側に引っ張られるように感じる力のことです。 ただし、遠心力は「見かけの力」ともよばれます。なぜなら、もし自動車を降りて、そのカーブに立ち止まったとしたら、遠心力はまったく感じられません。遠心力は加速度が生じる運動を物体が行うときに見かけ上、あらわれる力だからです。 ちなみに、地球科学における重力のこの定義は、地表の物体の重さを論じる際にとても実用的です。地球の自転による遠心力はオン・オフできないため、それを含めてしまった方が都合がいいからです。 一方、天文学や宇宙物理学では、通常、自転する地球の表面の物質ではなく、宇宙空間に漂う物体、そしてその物体に働く力を考察します。 そのため、自転による遠心力を除いた部分、すなわち万有引力の部分だけを指して重力とよぶならわしになっています。 以降の記事「宇宙に広がっている謎の「ナノヘルツ重力波」の存在。その衝撃の観測報告と「宇宙空間の歪み」を生み出した源とは?」では2023年に観測された謎の重力波について紹介します! ---------- ----------
浅田 秀樹(弘前大学 理工学研究科 宇宙物理学研究センター センター長・教授)