大関大の里、父の思いを込めた「唯一無二の力士」へ 横綱へも最速昇進なるか
日本相撲協会は25日、東京・両国国技館で大相撲九州場所（11月10日初日、福岡国際センター）の番付編成会議と臨時理事会を開き、西関脇大の里（24）＝本名・中村泰輝、石川県出身、二所ノ関部屋＝の大関昇進を満場一致で決めた。 【写真】地区の相撲大会で優勝した小学6年生の大の里。卒業時に身長は170センチ台中盤だったという 空前の出世の早さは頭に表れた。初土俵からわずか9場所。大銀杏（おおいちょう）が結える長さまで髪が伸びていない大の里は、ちょんまげ姿で大関となった。 伝達式で述べた口上は「大関の地位を汚さぬよう、唯一無二の力士を目指し、相撲道に精進します」。高校時代の恩師と相談し、周囲に「唯一無二になってほしい」と語っていた父、知幸さんの思いを込めたという。24歳の新大関は「他に類を見ない、このような人は現れないというくらいのお相撲さんになりたい」と決意を口にした。 番付の急上昇に伴い、求められることは大きくなる。8月の夏巡業ではぶつかり稽古で大関豊昇龍に胸を出してもらった際、遠慮もあってか動作が遅く、境川巡業部長（元小結両国）から指導を受ける場面があった。師匠の二所ノ関親方（元横綱稀勢の里）が「大関、横綱は別格。稽古場の背中もみんなが見ている」と語るように、今後は一層、範を示さねばならない立場だ。当の大の里も「まだまだ勉強」と十分自覚している。 肝心の土俵の方は、横綱にも最速で昇進できるかに注目が集まる。年6場所制となった昭和33年以降、初土俵から横綱までの所要場所数は輪島の21が記録だ。 二所ノ関親方は「こうなったら負けないというスタイルが少しずつできあがってきた。それを確信に変えることが横綱に昇進するカギ」と指摘。大の里自身は「このような経験をして、もう1回、伝達式をやってみたい気持ちになった」と語った。未完の大器にとって、ここは通過点でしかないのかもしれない。（宝田将志）
