市川中車さん「もう一本道、一門に尽くす」 揺れた澤瀉屋、猿翁さん、團子さんを語る
「團子自身も使命を感じていたようで、子供の頃に小言を言ったら、『僕がどれほどの思いでやっているか、あなたは知らない』と言われたことがありました」
猿翁さんとはおよそ10年間、父と子としての日々を過ごした。「團子は役のアプローチなど父に似ているんじゃないかな」。そう語ると、ふと笑みが浮かんだ。
困難を乗り越えるため、一門は中車さんを先頭に歩み始めている。「私は歌舞伎の知識や技術では一門の上に立つことはできない。でも父が育てた部屋子さんたちとは違うところで、一門が少しでも良くなるよう頑張りたい。それが僕の願いの全てです」。中車さんは真摯にそう語った。(亀岡典子)