「日本三大和牛」 松阪牛と神戸牛、もう一つは? 文献ひもとく
産地名で海外産と差異
和牛の歴史に詳しい和牛技術コンサルタントの小野健一さん(66)によると明治時代、4銘柄牛と同時期に、中国地方の牛の肉も東京で「おいしい」と評判になった。体格や繁殖能力に優れていたが、主に農耕用の牛の繁殖に使われ、「肉牛としては全国的に広がらなかった」という。 小野さんは「日本三大和牛は、91年の牛肉輸入自由化後に生まれた言葉ではないか」と指摘する。当時、安価な輸入牛肉と差別化するため、産地の名前を付け、一定の条件で生産するなど牛肉の銘柄化が進んだ。 中でも4銘柄牛は「歴史が長いだけでなく、出荷条件も厳しい」と小野さん。「ブランド価値を高めるためにまず流通業者が使い、消費者や他産地から評価され、日本三大和牛と呼ばれるようになったのでは」とみる。 四つの有力な銘柄牛があるのに、なぜ「三大和牛」という言葉が浸透したのかという点も気になる。 「日本三大ブック」の著者・加瀬清志さんは「日本三大名城、日本三大温泉など、日本人は“三大○○”を好む」と指摘。その上で「松阪牛と神戸牛の2銘柄と並んで、東日本は米沢牛、西日本は近江牛と、地元に近い銘柄牛をそれぞれ選んで、三大和牛としたのではないか」と加瀬さんは見立てる。(高内杏奈)
日本農業新聞