「釣りはいらねぇ」「あのクルマ追って」「東京から四国まで」は本当にあった! タクシードライバーが遭遇したドラマみたいなホントの話
タクシードライバーはドラマのような体験をしている?
テレビドラマ、とくに「刑事もの」を見ていると、たとえば徒歩で移動している容疑者を刑事が尾行していると、急に容疑者がタクシーを停めて乗り込んでしまったという場面がよくある。そして尾行していた刑事があとからきたタクシーを停め「前のクルマを追いかけてください!」という展開へとよくなっていく。閑静な住宅街なのに頻繁に空車のタクシーがくるような場面については、タクシーの稼働台数が少なくタクシー不足が叫ばれるいまでなくとも、「そんなに走っていないのでは?」と突っ込みを入れたくなるような、非現実的な光景にも見えてしまうが、そこはテレビドラマだからと納得するようにしている。 【画像ギャラリー】タクシー運転手不足解決する可能性のあるさまざまな対応 実際にこのようなシチュエーションが果たしてあるのかとい言えば、意外なほどタクシー乗務員は遭遇しているようだ、実際に刑事が尾行を頼んでいるのか、それとも民間人がほかの事情で頼んでいるのかについては、乗務員としては「なんで追いかけるのですか?」とは乗客に聞くこともなかなかできないので、はっきりしないようだが、民間人レベルで“わけあり”で尾行を頼むケースが多いようである。 ちなみに、あるドラマを見ていたら、尾行していたタクシーがあるホテルに停まったので、少し手前に尾行していたタクシーを停めて降りるときに、「お釣りは結構です」といって現金決済して降りるシーンがあった。チップ文化のない日本なのだが、タクシーにおいては、「お釣りをもらうのが面倒」とか、「乗務員と楽しく話ができたから」など、さまざまな理由で「お釣りは結構です」と言ってチップ代わりに渡すこともよくあるようだ。
”超”がつくほどのロング客は実際にいる!?
かつて、故 渡瀬恒彦氏主演で長いことシリーズ化されていた2時間ドラマ「タクシードライバーの推理日誌」シリーズが放映されていた。渡瀬氏扮する元刑事のタクシー乗務員が毎回都内から新潟県などといった「超ロング客(超長距離利用客)」を乗せると(美人が多い)、その乗客がじつは犯人であり、そのアリバイなどを崩していくというストーリーであった。 あるとき、都内から40㎞ほど離れた東京隣接県の自宅へ帰るとき乗ったノリの良いタクシー乗務員に、「タクシードライバーの推理日誌のように、たまたま乗せたらとんでもない長距離の行き先を告げられるなんてことさすがにないですよね」と聞くと、「これがね、意外にあるのですよ」と答えが返ってきて驚いた。「仲間は一度四国まで行って欲しいと言われたことがあると言っていましたよ」とのこと。「実際四国まで乗せたのですか?」と聞き返すと、「そこはまあ……」と言葉を濁していた。 1回の出番での走行距離や乗務時間などは厳しく管理されており、さらに四国とまではいかなくともたとえば都内から北関東3県(群馬、栃木、茨城)あたりの移動でも、所属タクシー会社へ乗せてよいかなどを問い合わせる必要があったりするそうだ。タクシーの燃料はLPガスとなるが、通常は営業所近くで会社が契約しているガススタンドでガスを充てんするので、充てんのたびに現金などで料金を払う必要はないが、遠乗りとなれば出先で飛び込み(契約していないガススタンドとなるので)充てん可能なガススタンドをあらかじめ確認しておく必要なども出てくる(もちろん出発時のガス残量なども会社からは聞かれることになるだろう)。 そして、会社から許可が出れば長距離運行も可能となるが、都内から近畿地方や四国などはまず現状、流しのタクシーを拾って……というのではかなり難しいようだ(「それでもタクシーで」という場合は、タクシー会社へ問い合わせてみることをおすすめする)。 「そんなのテレビドラマだけの話でしょ」ということが、意外に現実世界でもそんなに珍しくないことは、タクシーの例を挙げただけだが、世の中には結構あるようだ。
小林敦志